仕事でマーケティングについて扱う方はブランドエクイティという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
そしてなんとなくのイメージはあるけど、きちんとどういうものなのか知らないという方も少なくないでしょう。
ブランドの持つ資産価値とも言い換えられますが、ブランドエクイティとはどういったもので、それを高めることで何ができるのか、なぜ必要なのかを解説していきます。
ブランドエクイティとは?
カリフォルニア大学バークレー校のデービット・A・アーカーが1991年に発表した著書『Maneging Brand Equity』の中で「ブランドの名前やシンボルと結びついたブランドの資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大させるもの」と定義しました。
噛み砕いて言えばブランドを単なる名前やロゴではなく、企業の持つ資産として評価しましょうという考え方です。
ここでいう資産とは、将来利益を生み出すもののことであり、なんらかの設備であったり、経営者のスキルといったものも資産となります。
ブランドが資産として価値を持ち、将来の利益を生み出すものになるというのは、今となっては当たり前ですが、当時は商品の添え物程度にしかブランドを捉えていなかったので、かなりの衝撃が各界にもたらされました。
昨今ではテレビやラジオ、雑誌といった従来のメディアに加え、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を用いたブランディングが見られ、質の良い製品を出していれば自然とブランドが構築されるといった考えから、ブランドは自ら育てていくものだという認識に変わっていることが伺えます。
ブランドエクイティを構成する5つの要素
それではブランドエクイティを構成する5つの要素に分解して、どのような要素から成り立つのかを見ていきましょう。
ブランド認知
まず一つ目はブランドがどの程度認知されているか、を示す度合いであるブランド認知です。
そしてただ認知しているだけではなく、商品やサービスが正しくカテゴライズされているか、消費者が自分とどのような関わりを持つか認識されているかが重要です。
例えば、無印良品であればシンプルで使い勝手のいい雑貨や、オーガニックな食品などを取り扱っているチェーンで、普段使いできて質の良いものを買いに行く場所として多くの消費者に捉えられています。
この認知度が高ければ、〇〇が欲しい、というニーズが発生した場合に購入先の候補になってきますし、候補を検討するときの順位が高かったり、他に思い浮かばないような状況を作ることができれば多くの顧客を獲得できるようになります。
知覚品質
消費者側がそのブランドに対してどの程度の品質をイメージしているか、が知覚品質です。
ここで重要なのが、「消費者側が感じる品質」であり、企業が認識しているものや品質の事実そのものではないということです。
そして消費者が感じる品質とは、商品やサービスの機能だけでなく、信頼性や雰囲気などと広範囲にわたっています。
ベンツは高級車、という認識を持っているが性能はよく知らない消費者が多いことからも、品質と知覚品質を徹底的に分けて考える重要性が理解できるでしょう。
ブランドロイヤリティ
ブランドロイヤリティとは、商品への愛着度合いを指し、これが高いと継続率が高まります。
一見リピート率と同様に思えるかもしれませんが、リピーターは「これがいい」「これでいい」「これしかない」の3種類に分類され、「これでいい」と「これしかない」の顧客は代替商品が見つかった場合簡単に流出していきます。
「これがいい」という顧客を増やすことが安定的な収益を上げる原動力となるため、ブランドエクイティを構成する要素の中でも特別重要だとされています。
ブランド連想
消費者がそのブランドをイメージするときに、合わせて想起するイメージをブランド連想と呼び、感情移入をもたらします。
消費者に感情移入してもらえると、「あのブランドで」という指名買いをしてもらえることになるため、このイメージをより強固にすることが必要です。
なお、想起するイメージが広範囲に及ぶとブランド拡張やリブランディングをもたらします。
また無印良品を例に挙げれば、「わけあって、安い」というキャッチコピーを掲げ、生産工程から素材からシンプルに必要なものだけを、という理念で事業が始まっていますが、今となっては手がける商品は雑貨にとどまらず食品や衣料、家具など広範囲に及び、生活の様々なシーンに寄り添うおしゃれなブランドとして受け入れられています。
西友のプライベートブランドとして発足したはずが、今や老若男女に愛されるブランドにまで成長したのは、このブランド連想をうまく活用した実例となっています。
その他ブランド資産
最後にその他ブランド資産ですが、これは特許や商標権といったブランド以外の無形資産や、取引先との関係性などがあたります。
直接消費者の目に止まるものではないものの、ブランドの持つ資産価値の中に確かに内包されている要素となっています。
ブランドエクイティは重要!必要性を解説
ここまでですでにブランドエクイティが重要だということは理解いただけたと思いますが、改めてなぜ必要なのかという視点からも見ていきましょう。
企業と顧客を直接繋ぐ資産
企業は工場や生産設備、自社ビルなどの不動産以外にも有価証券や特許などの知的財産といった様々な資産を持っていますが、それらは顧客には直接影響を及ぼしません。
顧客に選んでもらえなければ収益は上がらず、他の資産は意味をなしませんが、企業と顧客を唯一結ぶのがブランドです。
ブランドがあるからこそ顧客は企業を選ぶのであって、そこに価値を見出せなければ意味がないのです。
希少性が高い資産
独自の個性を持ち独立した替えの効かない存在は、企業だけでなく顧客にとっても希少性が高いものとなります。
そして、希少なものは他のものに比べて優位な立場に立てることから、資産の中でもブランドの持つ価値が改めて高いものだと認識できるでしょう。
長期に渡る継続性のある資産
形ある資産は老朽化していきますが、ブランドを資産として考えた場合には消費者の内側に蓄積されていくものになりますので、適切にマネジメントを行えば、長期的に価値を発揮し続けることができます。
また、一度認識された価値や愛着は簡単に失われることは少ないため、これも長期的な展開を望むことができる要因となっています。
企業の中核となる強みの資産
ブランドの持つイメージは消費者だけでなく、働く側にも作用します。
自分がそのブランドイメージを発信する側だと認識すると、ブランドの持つ価値、「らしさ」とも言い換えられますが、それを壊さないように努力します。
たとえアルバイトであったとしてもそのブランドが好きでそこを選んだことに変わりはなく、高い帰属意識やモチベーションは企業の中核を成し、強みとなっていきます。
まとめ
消費者に与える影響は計り知れないのがブランドエクイティですが、資産としての側面をよく理解し、どのように構成され、どう作用していくのかを検討することが大切です。
マーケティングに触れる方は必須の知識となりますので、しっかりと理解しておきましょう。