マーケティング戦略の基本は、どの市場でどの程度のニーズがあるのか、そのニーズを調べてその市場に合った売り方で商品をプロモーションしていく点です。しかしこれでは既存のマーケットの中だけで戦うことになるためにその限界はいずれ訪れます。
そうはいっても、もしマーケットを生み出すことが出来たらどうでしょうか。つまり新たなニーズを発見しその市場を開拓することが出来たらどういうことが起こるでしょうか。
今回はこのようなマーケティング戦略、イノベーター理論をご紹介します。
イノベーター理論ってなに？
イノベーター理論とは、新しい製品やサービスなどの市場普及率を表したマーケティング理論です。スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授の著書「イノベーション普及学」により 1962年に提唱されたものです。
新たに市場を作り出し開拓していく過程では普及させることが重要となります。
今この世界にないサービスだとしても、もっと改善されたら便利なものになるといったものはたくさんあります。しかし今ない市場に新しいサービスを投げたところで、すぐに普及しません。これには、人は見たことのないものは信用しないといった心理が働くためです。
身近な例を挙げると、スマートフォンが発売された時、周りで「使いにくい」「ガラケーのほうが使いやすい」といった方が多かったのではないでしょうか。
しかし、今そのような人はいないように、普及するためにはある程度の時間が必要であり、それは商品やサービスまた媒体によっても異なりますので、イノベーター理論では「普及」が重要になってくるのです。
イノベーター理論の５つのタイプを解説
イノベーター理論では、普及の過程を5つの層に分類しており、それをもとにマーケティング戦略、市場のライフサイクルについて検討することが推奨されています。以下ではその分類を行いますが、ここで注目すべきは、どのようなユーザーから商品が広まっていくかになります。
１、イノベーター（革新者）
新しいものが好きな層です。新しい商品やサービスが出ればそこにかかるコストなど気にせずとりあえず手に取るという層です。もちろんマニアックな方もいますが、イノベーターは流行に敏感であったり、好奇心の旺盛な方はこの層に入ります。
市場全体の割合では約2.5%が該当します。
２、アーリーアダプター（初期採用者）
イノベーターは発売される情報そのものを入手することが早く、発売前に手に入れてみたり、発売日に並んでまで入手する傾向があるのに対し、アーリーアダプターはそこまでの行動はしないものの、これは流行るから買っておこうというタイプの層です。
市場全体の割合で約13.5%がアーリーアダプターだと言われています。
アーリーアダプターは身近にいるものです。新商品の発売から数日以内に商品を手にしている、クラウドファンディング等で発売された新しい商品の情報を持っている等、アーリーアダプタ―は世間や業界のオピニオンリーダーやインフルエンサーになりやすい層です。
イノベーターが勢いで購入しているとすれば、アーリーアダプターは、その商品の便利さや必要性を見極めて購入しているように周りから思われていることもあり、周囲の人間に影響を与えやすいためです。
イノベーター理論はアーリーアダプター層の攻略が重要なのです。
３、アーリーマジョリティー（前期追随者）
アーリーアダプターに追随するようにして商品を購入する層です。好奇心は強いものの、誰よりも早く行動を起こすことはない慎重な部分を持ち合わせている層ですが、ひとたび情報の確信性が取れれば商品購入に至る層です。
アーリーマジョリティーは市場全体の34%程度を占めていると言われています。
アーリーマジョリティーはアーリーアダプターの意見に強い影響を受けるので商品の説明や価値を合理的に納得できるように説明できなければなりません。
４、レイトマジョリティ（後期追随者）
レイトマジョリティーは世の中にある程度その商品が認知された後に購入する層です。
すでに多くのユーザーが使用している商品だという確証がないと動かない層なので、普及していることが購入のポイントになります。
アーリーマジョリティーと同様に市場の34%程度を占めていると言われています。
５、ラガード（遅滞者）
ラガードは、５つのタイプの中でもっとも保守的な層で、市場全体の16%を占めます。
すでにその商品やサービスが定番化しないと購入することはありません。
新しいものを受け入れなくても今のままで良いという傾向にあるので、ラガードに受け入れてもらうには、レイトマジョリティーの状態からさらに時間をかけて普及させていく必要があります。
まとめ
イノベーター理論において、自分自身がどの層に位置するかを考えてみるのも良い機会かもしれません。自分が影響を受けている人がここでいうアーリーアダプターに該当していたり、意外な発見があるかもしれませんね。
新しい市場を作るためには、普及までの人間の「層」に着目して、相応な戦略を立てていく必要があります。その際は、イノベーター理論を正しく活用して、層を理解し正しいアプローチをすることで新たな市場を作ることも夢ではありません。