自社の規模を拡大したい時や売上を増やしたい時、新規顧客の獲得に注力することが多いかと思います。
新規顧客の獲得は既存顧客の約5倍の費用をかけて集客をしますが、一度きりの取引で終了する可能性もあります。
一度しか販売チャンスのないジャンルを除くと、新規顧客の開拓ばかりではいつまで経っても利益率を高めることは難しいとも言えます。
これに対し、既存顧客が自社へもたらしてくれる生涯価値に注目し始めました。既存顧客に対してプロモーションをしたほうが効果が得られやすいのです。
これが、「ライフタイムバリュー(Life Time Value)」です。今回はこの顧客生涯価値についてご説明します。
ライフタイムバリューとは
ライフタイムバリューとは、顧客が自社に対して最初の接触時点から関係性が継続している間に自社が得られると想定する収益の総額を算出する指標のことです。
従来までは指標を出すための考え方でしたが、近年の顧客の消費活動の多様化によってマーケティングの本質的な考え方へと変化していきました。
つまり、一人ひとりの顧客視点で長期的な価値と収益を考えていくことが重要になってきたためです。
このライフタイムバリューの考え方では、高額なコストを投じて獲得した新規顧客よりも、生涯を通じて自社のファンになってもらうことによりリピーターから生み出される利益のほうが影響が大きいため、それらを強化していく考え方です。
具体的には、継続的に商品やサービスを購入し続けてもらう環境や仕組みづくりです。
これには顧客との関係性の強化が重要となってきますので、後述のCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の領域にも関係しています。
ライフタイムバリューの計算方法
従来まで使用されていた「指標」としてのLTVは以下の計算式で算出します。
「LTV = 購買単価 × 購買頻度 × 契約継続期間」
購買単価は、顧客からもたらされる利益
購買頻度は、顧客の維持率・期間
契約継続期間は、顧客顧客維持コスト
ライフタイムバリューの活用方法
なぜいま、ライフタイムバリューが見直されてきたかというと、オンラインの発展により企業と顧客の接点が増えたことや、データによる分析が以前よりも容易になったことからCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の取り組みが発展したためです。
ライフタイムバリューとCRMの関係性が注目され始めたことにより、コストをかけて獲得する新規顧客よりも一度関係を築いた顧客に対してのアプローチを見直すほうが長期的にみて自社の収益性が高まると考えられるようになりました。
そのためには一人ひとりの取引金額・継続期間・販促などへの顧客の反応を測定する手段の活用が重要となってきたため、LTVの測定と考え方が再注目されているのです。
ライフタイムバリューを高めるためのたった4つの戦略
ライフタイムバリューの指標の計算式がわかっても、具体的にどうやって高めていけばよいでしょうか。
ここでは、ライフタイムバリューを高めるための具体的に打つべき施策の4つの戦略について1つずつご紹介します。
1、個客シェアを高める
あえて個客と呼んでいる理由があります。
マーケティングでは、顧客は企業単位、個客は人単位、固客は以前からの固定のお客様と使い分ける場合があります。
個客シェアを高めることは、一人のお客様の購入率を高めることを意味します。
ある小売業の調査で、商品Aを自社で購入しているお客様は他社でも同商品を同じ数だけ購入していることが発覚しました。
総需要を把握することで、自社においての1人あたりの購入数を増やすことは可能であるという考え方です。
2、カテゴリ範囲を広げる
オンライン限定ショップが実店舗を構える、化粧品会社が健康食品事業を行うなど、カテゴリ範囲を広げることでLTVの向上に有効です。
派生をすることで顧客の潜在的ニーズに応えることが可能となります。
3、タイミング需要を生む
例えば新製品開発をする際、自社の都合での開発が主流でした。
作ってから売るのではなく、顧客が求めているから作るという視点に切り替えると、顧客のライフタイムイベントやタイミングが起点になってきます。
4、価値を生み出す
商品は販売したら終了ではありません。もちろん売ることは最も重要ですが、長期的な視点で考えると継続して購入してもらえる仕組みづくりを提供することで顧客がファン化していきます。
調理器具を製造・販売している会社が料理教室を開催するとします。
開催期間中に自社製品が更に売れることもありますし、料理教室で使用されている商品を扱っているメーカーとしてブランド力が高まることもあるでしょう。
まとめ
ライフタイムバリューの使われ方も時代とともに変化しました。
この背景には、IT技術の進化により企業と顧客との距離が短くなったこと、ソーシャルメディアの登場により消費者が他の消費者へ与える影響が大きくなった、オウンドメディアなどの登場により顧客とのつながりを強化できるようになったなどが挙げられます。
つまり自社の工夫次第で顧客との距離を縮めることが容易になってきたのです。
商品認知からファン化まで育て上げた顧客が自社へ与える影響力は大きなものになることでしょう。
その際にはライフタイムバリューを意識して販売戦略を練ってみてはいかがでしょうか。