法人

自社に投資すると減税になります

ベンチャー企業の社長や、最近会社を立ち上げたばかりの経営者は、「投資をしなければ成長は見込めない」という覚悟をお持ちだと思います。

しかし投資はリスクを伴います。投資をしたものの思うようなリターンを確保できなければ、最悪、会社は倒産してしまいます。

「儲かると分かっているけど」投資をためらってしまうのは、リスクをとる勇気がわかないからでしょう。

 

そこで政府が動き出しました。

中小企業の発展こそ日本経済の成長の切り札と考えている政府は、投資を決断した企業の税金を減らす政策をいくつか打ち出しています。

 

社長は、いまこそ自分の会社に投資をするときです。

会社が発展して、会社が支払う税金も減れば、一挙両得です。

 

投資減税を見てみましょう。

 

IoT投資減税とは

IoT投資減税とは、IoT(モノのインターネット)関連に投資したときに減税になる仕組みです。

 

IoT投資減税を見る前に、その前進であるIT投資減税について紹介します。

 

もう15年ほど前の話になりますが、自社のIT化を進めた企業の税金を減らした、IT投資減税という仕組みがありました。

そもそも企業のIT(情報技術)化とは、ビジネスにインターネットやシステムやパソコンなどを導入することで、業務を効率化し、生産を自動化し、生産性を上げ、少ない経費で多くの利益を上げる取り組みのことです。

 

2018年度から始めるIoT投資減税は、15年前のこのIT投資減税がベースになっています。

今回のIoT投資減税は、いわばIT投資減税のアップグレード版だからです。

IT投資減税を知れば、IoT投資減税をより深く理解できます。

 

キーワードは効率化、自動化、生産性

なぜ政府が減税までして企業のIT化を後押ししたかというと、ITによって

  • 業務の効率化
  • 生産の自動化
  • 生産性の向上

が図れるからです。

 

業務の効率化とは、必要な人手を減らしつつ、なおかつこれまでの業務のクオリティーを維持することです。人件費が安くなるので、企業の利益を押し上げます。

 

生産の自動化とは、それまで人の手でつくっていたものを自動生産に切り替えることです。これも企業に大きな恩恵をもたらします。

 

生産性の向上とは、同じ人が同じ時間だけ働いているのに、成果が上がることをいいます。人件費は同じなのに1人当たりの稼ぎがアップするので、これも企業の儲けを増やす仕組みといえます。

 

ITとIoTの違いとは

IoTはITより「o」が加わっている分だけITより豪華なもの、と考えていただいて構いません。

 

IoTは「モノのインターネット」と訳されます。ネットといえば、スマホやパソコン、タブレットを連想するでしょう。しかしIoTは、すべてのモノをネットにつないでしまおうという発想なのです。

自動車、冷蔵庫、電子レンジ、照明、掃除機ロボット、監視カメラ、自動販売機など、とにかくありとあらゆる機器をネットにつないでしまうのです。

 

企業のIoT投資は、IT化よりも効率化、自動化、生産性向上を大きく進めます。企業がIoT化すればするほど、日本経済が強くなるというわけです。

 

日本経済が強くなれば税収が増えるので、政府はIoT化する企業の税金を減らして、IoT化を後押ししようと考えたのです。

それがIoT投資減税です。

 

IoT投資減税の具体的な中身

IoT投資減税の具体的な中身は次の通りです。

  • データの連携と利活用を目的とする
  • 減税対象となるのは機器やソフトウエアへの新規投資
  • 投資合計額の30%の特別償却を認める
  • または3%の税額控除(法人税額の15%が上限)
  • 期間は2018年4月から2021年3月末までの3年間

 

中小企業の社長が気になるのは、上の2つでしょう。つまり「何をしたら減税してもらえるのか」だと思います。

 

企業が次の項目に投資をしたとき、法人税が減ります。

  • センサーなどのデータを集める機器
  • データを分析して自動で働くロボット
  • データ連携システムやデータ分析システム。具体的には、関連するサーバー、AI、ソフトウェア
  • サイバーセキュリティ

 

手続きは少し面倒

IoT投資減税は、ただ単に「IoT関連にお金をかけました」と申告して受けられるものではありません。事前にIoT投資計画を作成し、それを経済産業省の出先機関である地方の産業局に申請しなければなりません。

申請する内容は次の通りです。

  • 労働生産性が2%以上伸びるという見込み
  • 投資利益率が年平均15%以上伸びるという見込み

 

労働生産性とは、数値で表します。計算式は次の通りです。

労働生産性=労働による付加価値÷労働投入量

この数字は、大きいほうが「労働生産性が良い」と評価されます。

 

投資利益率は投資に対してどれだけ利益を出したかを表す指標で、次の計算式で算出します。

投資利益率(ROI)=(売上-売上原価-投資額)÷投資額

「売上-売上原価」で利益が出ます。ここから投資額を差し引くことで、「投資が押し上げた利益」が出ます。それを投資額で割ることで、投資の効果がどれだけ利益に反映したかが分かります。

 

  • 労働生産性が2%以上伸びるという見込み
  • 投資利益率が年平均15%以上伸びるという見込み

の2つを計算して計画書にして経産局に提出することは面倒なことに感じるかもしれませんが、数字は「見込み」でいいので、実は高いハードルではありません。

 

設備投資減税とは

いわゆる設備投資減税には、次の3つがあります。

  • 中小企業経営強化税制
  • 中小企業投資促進税制
  • 商業・サービス業・農林水産業活性化税制

1つひとつ見ていきましょう。

 

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、中小企業の社長にとって、とてもありがたい減税方式です。

減税を受けられる投資は、

  • 人材育成投資
  • 財務管理投資
  • 設備投資

の3種類です。

いずれも「会社を大きくしたい」「成長させたい」と考えている社長なら「やらなければならない」と感じている投資ではないでしょうか。

 

メリットは次の通りです。

  • 法人税での即時償却が可能になる
  • 取得価格の10%が税額控除される

このいずれかを選択できます。

 

また、減税ではないのですが、上記の3つの投資を行うと金融支援を受けることもできます。

この減税を受けるにも、役所に経営力向上計画を提出する必要があります。

 

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業が生産性を向上させることができる設備投資を行ったときに、税額控除してもらえる仕組みです。

控除額は、取得価格の7%でかなり魅力的な規模といえます。

対象になるのは、中小企業のほか従業員1,000人以下の個人事業主なので、かなり多くの会社・個人がこの仕組みを使えます。

 

中小企業投資促進税制が適用される投資対象は次の通りです。

  • 160万円以上の機械または設備
  • 120万円以上の測定工具または検査工具
  • 70万円以上のソフトウェア
  • 3.5トン以上の貨物自動車
  • 内航船舶

 

商業・サービス業・農林水産業活性化税制

商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、文字通り商業、サービス業、農林水産業に特化した投資減税です。

減税内容は、

  • 取得価格の7%の税額控除
  • 取得価格30%の特別償却

となっています。

 

商業・サービス業・農林水産業活性化税制が適用される投資対象は次の通りです。

  • 30万円以上の器具、備品、ショーケース、看板、レジスター
  • 60万円以上の建物附属設備

 

賃上げ減税とは

政府は2018年度から、従業員の賃金をアップした企業に減税する方針を固めました。

賃金が上がることは労働者にとってとても嬉しいことです。なぜそれを、政府が後押ししてくれるのでしょうか。

それは賃金が上がることは、政府にも企業にも労働者にも良いことだからです。

 

賃金が上がると政府も企業も労働者もハッピーになる

賃金が上がると、

・従業員の賃金が上がる(労働者に◎)

・消費が増える、モノやサービスが売れる(労働者と企業に◎)

・経済が活性化する、企業が儲かる(企業に◎)

・税金が増える(政府に◎)

という好循環をつくることができます。

 

賃上げ減税の内容

賃上げ減税は2017年度以前にもあり、その内容は、賃上げをした企業に最大10%の法人税減税をする、というものでした。

2018年度からこの減税幅が拡大します。

 

大企業に対しては、法人税から給与の増額分の15%を差し引いてもらえます。

中小企業については、賃上げを1.5%以上行ったら、給与増加分の15%を法人税から差し引いてもらえます。賃上げを2.5%以上にすると、給与増加分の25%が法人税から差し引かれます。

 

まとめ~投資減税はいつまでも存続するものではない

冒頭に紹介したIoT投資減税は、IT投資減税に続く第2弾的な存在ですが、IT投資減税とIoT投資減税の間には15年の空白があります。

つまり、政府はいつも投資減税を実施するわけではないのです。政府は「いま企業を奮起させたら税収が上がるな」と感じたタイミングで、減税を実施します。

企業の社長は政府の減税タイミングを見逃すことなく、効率的に投資を行っていってください。

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