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オーナー社長だからできる不動産節税とは

中小企業やベンチャー企業の場合、その会社を立ち上げた創業者が社長を務めていることは珍しいことではないでしょう。

このようなオーナー社長は、個人事業主の自由さと、株式会社ならではのビッグビジネスを展開できる可能性の、両方を兼ね備えているといえます。

そして税金の領域でもオーナー社長だからできる節税があります。

それは不動産を活用した方法です。

 

社長が不動産を購入し自分の会社に貸すことのメリット

会社が成長し、社長が「本社のほかに営業所をつくる必要がある」と感じたら、営業所にする不動産を社長が購入し、それを自分の会社に貸すという方法も検討してみてください。

会社にも社長にも、意外なメリットをもたらすかもしれません。

 

会社のメリット

会社が営業所を新設する場合、大抵はビルのテナントなどの物件を借ります。そうすると、会社は不動産会社に賃料を支払わなければなりません。

会社のおカネであるその賃借料は、不動産会社とビルオーナーを潤すだけです。

 

会社の支出を「回収する」という考え方

しかし社長が不動産を買い、その不動産を会社に貸してそこを営業所にすれば、会社が支払う賃料は、社長の収入になります。会社のおカネが社長を潤すことになるのです。

 

新営業所の開設に関わる会社の負担額は、ビルのテナントを使っても、社長の不動産を使っても変わりありません。

しかし会社の負担額(賃料)を社長に支払うのであれば社長にメリットをもたらすことになります。

社長のメリットは会社のメリットとほぼ同じなので、間接的に会社のためになります。

 

企業の株主のほとんどを社長が保有しているオーナー会社の場合「会社≒社長」という公式が成り立ちます。会社の支出が社長の収入になるということは、支出を回収しているようなものです。

 

賃料以外の不動産を借りるコストをゼロにできる

企業が営業所などの不動産を借りるとき、賃料以外にもコストが発生します。

不動産会社と契約を結ばないとなりませんし、保証金や敷金などを支払わなければなりません。

毎月の賃料を支払うには不動産会社振り込まなければならず、振り込み手数料もかかります。

 

こうした「諸々(もろもろ)のコスト」は意外に大きな金額になります。それをすべて不動産会社と見ず知らずの不動産オーナーに支払うのは、会社としては無駄ではないにしてももったいない経費といえます。

 

諸々のコストの中でも、その営業所を閉鎖するときはとても大きなコストを生みかねません。

借り主が建物の内装をどこまで原状回復するかは、貸し主と借り主で必ずもめます。このトラブル解決コストは、会社にとって大きな負担となるでしょう。

社長の不動産を借りれば、そのようなトラブルは生じません。

 

社長のメリット

社長の不動産を会社に貸す場合、社長にもメリットが生じます。

 

社長にとっては超確実な資産運用

会社が軌道に乗り、社長報酬が増えてくると、社長は資産運用を考えなければなりません。銀行に預けていてもおカネは増えません。株式投資だけではリスクが大きすぎます。

そこで報酬が増えた社長は分散投資しなければならないのですが、不動産投資も加えてもいいでしょう。

社長が投資目的は不動産を買い、その不動産に自分の会社が入居してくれたら、社長は安定した賃貸収入が得られます。

 

このとき、次のような副産物が生まれます。

会社が傾けばその不動産からの賃貸収入が途絶えるわけですから、社長の会社経営のモチベーションに「自分の不動産の賃貸収入のため」という気持ちが加わるわけです。

社長はこれまで以上に会社のために働くようになります。

 

社長の所得税を減らせる

社長が新たな不動産を購入することは、固定資産税という新たな支出を生むことになります。これは社長にとっては増税になるので、マイナス要素です。

しかしこれまで説明した通りのメリットがあるので、固定資産税というマイナス要素は実質的に帳消しになります。

 

しかも、会社に営業所として貸した不動産に修繕などの必要が生じ、その修理のために多額の支出をしたとします。その修繕費や修理費は社長が負担しなければなりませんが、その結果、その不動産を使った社長個人の不動産経営が赤字になったとします。

 

するとその赤字分だけ、社長報酬からの所得を減らすことができるのです。つまり、社長自身の不動産経営が赤字になった場合、所得税を減らすことができるかもしれないのです。

 

これを「所得税の損益通算」といいます。社長個人の所得を考えた場合、会社からの社長報酬を「益」、不動産経営の赤字を「損」ととらえて、通算(相殺)してくれるのです。

 

社長の相続税を減らせる

不動産の相続税を計算するとき、その不動産の評価が大きな課題になります。

不動産の評価が高くなると相続税が増え、不動産の評価が低くなると相続税が減るのです。

つまり相続税の金額は「不動産で決まる」のではなく「不動産への評価で決まる」のです。

 

相続税法上の評価に仕方に「自用建物評価」「自用地評価」と「貸家評価」「貸家建付地評価」の4つがあります。

この4つの概要は次の通りです。

  • 自用建物評価:個人で所有している建物を空き家にしている場合の評価
  • 自用地評価:個人で所有している土地を空き地にしている場合の評価
  • 貸家評価:個人で所有している建物を貸している場合の評価
  • 貸家建付地評価:個人で所有している土地を貸している場合の評価

 

「自用建物評価」と「自用地評価」は「貸家評価」と「貸家建付地評価」より高くなってしまうのです。つまり同じ不動産でも誰かに貸していると評価額が下がり相続税が安くなるのです。

 

まとめ~リスクは不動産価値の減少

社長が会社の経営に必要な不動産を買い、そのうえで会社に貸しつける方法は、会社にも自分にも効果が大きいことがご理解いただけたと思います。

ただリスクがゼロではありません。この場合のリスクは、不動産の価値が下落すると、社長の資産が目減りすることです。しかし会社の発展のための投資を考えたとき、検討に値する手法といえるでしょう。

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