個人事業主

【個人事業主を守る】倒産防止共済、小規模企業共済、確定拠出年金、生命保険

個人事業主はいわば一匹狼です。守ってくれるものは何もなく、常に無防備状態です。

すべての個人事業主が、いつまで仕事が続くのかという不安を日々抱えながら、がむしゃらにビジネスに精を出す日々を送っていることと思います。

 

しかし、個人事業主向けのセーフティーネットはいくつか用意されています。

いざというときのために、用意しておいてはいかがでしょうか。中には節税効果が高いものもあります。

 

きょうは次の4つの「個人事業主を守る制度」を紹介します。

  • 倒産防止共済
  • 小規模企業共済
  • 確定拠出年金
  • 生命保険

 

倒産防止共済

「倒産防止共済」の正式名称は中小企業倒産防止共済制度といい、経営セーフティ共済という別名も持っています。

運営しているのは、独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称、中小機構)です。

 

名称に「中小企業」と付いていますが、個人事業主も加入できます。

 

取引先が倒産したときにお金を貸してくれる

倒産防止共済に加入していると、個人事業主の取引先が倒産などして資金繰りに困ったときに、最大8,000万円までお金を貸してもらえます。

 

「取引先の倒産など」とは、あなたの取引先が次のような状態に陥ったときのことをいいます。

  • 取引停止処分
  • 私的整理
  • 破産手続開始の申し立て
  • 災害による不渡り
  • 特定非常災害による支払い不能

 

あなたの取引先が上記の状態になった場合、あなたはこの共済から無担保、無保証人でお金を借りることができます。

貸付金額の上限は、次の2つのいずれか少ないほうです。

  • 回収困難となった売掛金債権の額
  • 倒産防止共済に支払った毎月の掛金(保険料のようなもの)の総額の10倍(最高8,000万円)

 

加入条件と掛金

倒産防止共済に加入できるのは、中小企業または個人事業主です。

毎月支払う掛金(保険料のようなもの)は、月額5千~20万円まで自由に選べます。

 

掛金は全額戻ってくる上に節税ができる

「取引先が倒産などしなかった場合、掛金として支払ったお金が損する」ということは、ゼロではありませんが、ほとんどありません。

 

まず、掛金を11カ月しか納めていないときに解約すると、掛金は戻ってきません。

しかし掛金を12カ月以上39カ月以下納めていれば、掛金の8割が戻ってきます。

40カ月以上納めれば、解約したときに掛金は全額戻ってきます。

 

「掛金が全額戻ってきても、制度を利用しなかったらプラスマイナスゼロじゃないか」ということもありません。

倒産防止共済の掛金は所得税の計算で経費に計上できるので、節税効果が発生するのです。つまりこういうことです。

 

  • 40カ月以上掛金を支払えば、少なくとも損はしない
  • 節税効果を考えれば完全に「得」をする

 

倒産防止共済は、利息のない貯金のようなものですが、節税効果があるので差し引きプラスになる、と考えていいでしょう。

 

 

小規模企業共済

個人事業主には退職金はありません。それで中小機構が、個人事業主や中小企業経営者向けに、退職金制度のような共済をつくったのです。

それが「小規模企業共済」です。これも「企業」と付いていますが、個人事業主も加入できます。

 

退職金を自分でつくる、というイメージ

小規模企業共済の仕組みは簡単で、個人事業主が毎月掛金を支払い、将来「退職金」という形で現金を受け取ります。

 

シミュレーションしてみよう

では、以下の条件で加入した場合、「退職金」と「節税効果」はいくらになるでしょうか、シミュレーションをしてみましょう。

 

年間所得500万円の個人事業主が小規模企業共済に加入して、毎月2万円の掛金を支払ったとします。年間所得は「退職金」の金額には影響しませんが、節税効果に影響するので設定しておきます。

 

  • 個人事業主の年間所得:500万円(20年間同額とします)
  • 掛金:月2万円
  • 加入期間:2018年1月~2037年12月(20年、240カ月)
  • 掛金の総額:480万円(2万円×240カ月)

 

2037年12月にこの個人事業主が廃業すると、「共済金A」という名称の退職金が支払われるのですが、その額は5,572,800円になります。

掛金の総額が480万円ですので、20年支払い続けた成果として、772,800円の利益を生んだことになります。

・5,572,800-4,800,000=772,800円

 

掛金2万円、20年加入で146万円の節税

さらに小規模企業共済は、節税効果もあります。税金の額を計算するときに、1年間の掛金の総額と同じ金額を、収入から控除してもらえるのです。

 

先ほどのシミュレーション「年間所得500万円、掛金2万円、20年間加入」の場合、小規模企業共済に加入すると、加入しなかった場合より1年で73,000円も税金を減らすことができるのです。

これは所得税と住民税の減額分の合計です。

 

この効果は税制が変わらない限り掛金を支払っている20年間続きますので、総額146万円も節税できるのです。

・20年×73,000円=146万円

 

 

確定拠出年金

「お金の名前」は異なりますが、「確定拠出年金」も退職金と同じように、老後の安心を確保するセーフティーネットです。

 

そして確定拠出年金にも節税効果があります。

確定拠出年金には「企業型」もあるのですが、個人事業主は「個人型確定拠出年金」に加入します。

 

私的年金という制度

個人事業主は公的年金(社会保険)の国民年金に加入していると思います。確定拠出年金は、将来的に国民年金だけのお金では足りないと感じている人が、年金を増やすために加入する制度です。

確定拠出年金は国民年金基金連合が運営していますが、私的年金となります。

 

投資というリスクがある

確定拠出年金は、お金を積み立てて老後に積み立てたお金をもらう、という制度ではありません。掛金をどこかに投資しなければならないのです。

投資先としては、

  • 株式
  • 日本債権
  • 海外債券
  • 日本円
  • 外貨
  • 不動産

などがあります。

投資先は加入者(個人事業主本人)が決めます。

投資なので増えることもありますし、減ることもあります。

 

メリットは節税、非課税、控除

確定拠出年金に加入していると、掛金の同額を控除してもらえますので、節税効果が生まれます。

また、確定拠出年金は投資なので、うまく運用すれば運用益が出でます。通常の株式投資などの運用益は課税されますが、確定拠出年金の投資による運用益は非課税です。

 

さらに将来、確定拠出年金から年金が支払われるとき、退職所得控除や公的年金等控除を受けることができます。

年金をもらう年齢になっても節税ができるというわけです。

 

ただデメリットも大きい

確定拠出年金のデメリットは、以下の3点です。

  • 60歳まで掛金を引き出せない
  • 掛金以外にもコストがかかる
  • 元本割れのリスクもある

 

最も大きいデメリットは、60歳まで掛金を引き出せないことです。掛金を支払えなくなった場合は掛金の支払いをストップすることはできますが、その場合、最悪掛け捨てに近い状態になります。

条件をクリアすれば解約一時金はもらえるのですが、この条件がとても厳しいのです。

確定拠出年金を検討している人は、60歳まで支払い続けることができるかどうか、しっかり考えてください。

 

また、確定拠出年金は投資をすることになるのですが、その投資を管理してくれる金融機関に手数料を支払わなければなりません。年間2,000円くらいになります。

 

そして投資ですので、当然「失敗」もあります。投資先のアドバイスを受けることはできますが、最終決断はあなたがしなければなりません。

投資に失敗すると、最悪、元本割れ、つまり掛金として支払った額より、将来に年金としてもらう額が減ってしまう可能性があります。

 

ただ、元本保証をした投資先もあります。その場合、リターンも小さいので確定拠出年金の魅力は薄れてしまいます。

 

生命保険

民間の生命保険に加入しても、節税効果はとても小さいです。控除の額は最大4万円しかありません。

しかし、生命保険のがん特約や入院特約などは、「誰にでも起きうる事故から守ってくれる」という性質があります。

 

企業の社員であれば、事故に見舞われても一定期間は労災保険や企業が守ってくれることがありますが、個人事業主は今日事故に遭ったら明日から困ります。

資金に余裕があれば、生命保険を検討してはいかがでしょうか。

 

 

まとめ~攻めと守りの両方を固めよう

あなたは「もっと攻めたい、もっと儲けたい」と考えて、会社を飛び出したはずです。多くの個人事業主は、攻め(ビジネス)は得意です。

しかしセーフティーネットを確保するという守りは、個人事業主は苦手なようです。

 

個人事業主としてのビジネス人生はとても長いものです。長ければ「山あり谷あり」ときに「崖あり」です。

守りもしっかり固めましょう。

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