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【個人事業主の税対策】特例を覚えてしっかり節税「家内労働者」「少額減価償却」「短期前払」

個人事業主の所得税の制度には、特例があります。

特例とは「この条件に当てはまる人は税金の額を安くします」というものです。

ただ税務署から「あなたは特例に該当しますよ」と通知がくるわけではないので、あなた自身が特例の制度を知っておき、それに当てはまったときに、自分で税務署に申し出なければなりません。

 

きょう見る特例は、

  • 家内労働者等の必要経費の特例
  • 少額減価償却資産の特例
  • 短期前払費用の特例

の3つです。

 

家内労働者等の必要経費の特例

「家内労働者等の必要経費の特例」は、使っていない経費を経費として認められるという、少し不思議な特例です。

 

65万円までは無条件で経費に計上できる

この特例を受けられるのは、家内労働者等に認定された人だけです。

特例の内容は、使った経費が65万円未満でも、65万円まで経費として計上できる、というものです。

 

「65万円」は1年間の合計額です。これ以降も、断りがない限り年額で表記していきます。

 

所得税は、次の2つの計算式で算出します。

・所得=収入-経費-控除

・所得税=所得×税率-課税控除額

 

経費の額が増えると所得が減り、所得が減ると所得税が減ることが分かると思います。

 

通常は、経費として50万円しか使っていなかったら、「50万円×税率」で計算した額しか所得税は減りません。

しかし家内労働者等は、実際は50万円しか経費を使っていなくても、「65万円×税率」分を所得税から引いてもらえるのです。ちなみに税率はその人の所得によって異なります。

 

家内労働者等に「とても優しい制度」といえるでしょう。

 

家内労働者等とは

とても優しい制度を利用できる家内労働者等とは、次の仕事をしている人です。

  • 外交員
  • 集金人
  • 電力量計の検針人
  • 特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行う人

 

もう少し詳しく職種を紹介します。

外交員 生命保険や損害保険の外交員など
集金人 新聞、NHK、ヤクルトなどの集金をする人など
電力量計の検針人 電力会社の検針人など
特定の人に対して継続的に人的役務の提供を行う人 楽器メーカーなどが運営するピアノ講師、ユーチューバー、いわゆる内職さん、会社から仕事をもらっているWEBデザイナー、専属モデル、レースクイーンなど

 

楽器メーカーの音楽教室はOK、自宅教室はNG

楽器メーカーが運営する音楽教室のピアノ講師は、楽器メーカーという特定の人のために人的役務を提供しているので家内労働者等に該当するのですが、自宅でピアノ教室を開いている人は、不特定の人が教わりに来るので家内労働者等には該当しないのです。

 

別に給料を65万円以上もらっていると使えない

ただ、これらの仕事に従事していても、別の仕事で給与として65万円以上収入があるとこの特例は使えません。

つまり一般的なサラリーパーソンの副業にはこの特例は使えません。

 

少額減価償却資産の特例

「少額減価償却資産の特例」は、青色申告者だけに認められた特例です。

 

白色申告者も20万円までなら一括償却できる

個人事業主が自動車やパソコンなどの高額で長期にわたって使えるものを購入した場合、購入した年に一括して経費に計上することはできません。

減価償却という方法で、何年かに分けて経費計上しなければなりません。

 

例えば軽自動車は4年にわたって購入費の4分の1ずつ経費計上しなければなりません。金属製の事務机に至っては、15年にわたって購入費の15分の1ずつ経費計上しなければならないのです。

 

ただし20万円未満の商品は、減価償却をする減価償却資産にしてもいいですし、一括で経費に計上する一括償却資産にしてもかまいません。

 

ここまでは白色申告者も青色申告者も同じです。

 

青色申告者だけは30万円まで一括償却できる

ところが青色申告者に限っては、30万円までの購入製品について、減価償却資産or一括償却資産を選択できるのです。

「今年は売り上げが急増したから、一括経費計上して所得税を減らそう」ということもできるのです。

 

1製品あたり30万円未満なのですが、複数の製品を購入していれば、総額が300万円未満まで一括経費計上できます。

 

ただし2018年3月までに取得したものに限る

ただこの特例を適用してもらえるのは、2018年3月までに取得した製品(資産)に限ります。

また、個人営業を開始した年で、12月31日までの事業期間が1年に満たない場合は、上限の300万円を12で割って、事業月数でかけた金額までしか特例を使うことができません。

 

 

短期前払費用の特例

短期前払費用の特例は、まだサービスを受ける前にその料金を支払ったときに、経費計上できる仕組みです。

 

原則はサービスを受けたときに計上する

「料金を支払っているのだから経費計上するのは当たり前ではないのか」と思うかもしれませんが、違うのです。

前払いした場合、そのときは費用計上できないのです。

前払いした金額は、帳簿上は「経費」ではなく「資産(前払費用)」に記載しておきます。

そして実際にサービスを受けたときに、経費計上します。

 

例えば、個人事業主が事務所を借りている場合、3月に4月分の家賃10万円を支払ったら、

  • 3月は資産(前払費用)として10万円計上
  • 4月経費として10万円計上

とするのです。

 

4月分の家賃を3月に支払うのであれば、個人事業主の所得税は1月1日から12月31日の1年間で見るので経費の額は関係しませんが、12月に翌年1月分の家賃を支払った場合、12月に支払った家賃のお金はその年の確定申告に費用計上できません。

その分所得税が高くなってしまいます。

 

特例を使える条件

短期前払費用の特例を使うには、次の2条件をクリアする必要があります。

  • 「その1年」で終わるのではなく、その年以降も毎年継続して前払いする
  • 料金を支払った日から1年以内にサービスを受けなければならない

 

例えば2018年2月に、3月~2019年2月分(1年分)の家賃を前払いしたとします。

このとき、2018年分の所得税(確定申告は2019年2月中旬~3月中旬に実施)を計算するときに経費計上して、所得税を減らすことができるのです。

 

この特例のデメリット

短期前払費用の特例は、厳密には「節税」ではなく、税金の先送りです。

先に費用計上して先に節税をするか、後に費用計上して後から節税するかの違いでしかありません。

また、前払いをするので、多額の現金がなくなることになります。資金繰りを考えながら行う必要があります。

 

短期前払費用の特例は、「その年たまたま大きな利益を上げそうなので、特に経費を多く計上しておきたい」というときに使ってはいかがでしょうか。

 

まとめ~税理士を選ぶときの「基準」になるかも

特例は、国が税の公平性を保つためにつくったものです。弱い立場にある個人事業主には、多くの特例が用意されています。

もしあなた事業が拡大して「そろそろ税理士を頼もうかな」と考えているとき、「特例をしっかりアドバイスしてくれるかどうか」を、税理士の選考基準にしてはいかがでしょうか。

税理士には、個人事業主の税務処理が得意な人と、法人が得意な人がいます。できれば個人事業主のために長年働いている税理士に頼みたいものです。

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