個人事業主

【個人事業主の税対策】帳簿をつける

会社を辞めて個人事業主を始めるということは「全部自分でやる」ということです。その際、多くの個人事業主を悩ませるのが、経理と確定申告です。

 

本来のビジネスについては、会社時代の延長で問題なくこなすことができても、経理の知識がないと経理業務も確定申告手続きも戸惑うでしょう。

 

しかし安心してください。

必ずなんとかなります。

 

なぜなら、経理と確定申告は、税対策の上でとても重要だからです。経理と確定申告をしっかりやらないと、節税もできませんし、最悪、脱税になりかねません。

経理と確定申告は「必ずやらなければならないこと」であり、必ずやらなければならないことは、必ずできるようになります。

 

また、経理と確定申告の基礎知識の獲得は、特別な才能は要りません。一歩一歩確実に進めていけば、誰でも確実に身につきます。

 

それではその第1歩目である「帳簿をつけること」について詳しく見ていきましょう。

 

会計ソフトを使えば一発解決

結論から申し上げますと、帳簿づけは会計ソフトを購入すれば一発で解決します。

大量の帳簿をつける必要はなくなり、毎日こつこつパソコンに入力していけば、経理と確定申告に必要な書類が簡単に完成します。

 

会計ソフトは、有料のものと無料のものがあります。有料ソフトのほうが使いやすいのですが、無料ソフトでも十分使いこなせるでしょう。

 

会計ソフトを使うと、損益計算書と貸借対照表を簡単に作成できます。

 

有名な有料ソフトと無料ソフトを2つずつ紹介します。

無料ソフト 有料ソフト
「フリーウェイ経理Lite」

http://freeway-keiri.com/

「freee」

https://www.freee.co.jp/

「エクセル簿記」

http://blog.management.main.jp/

「MFクラウド会計」

https://biz.moneyforward.com/

*この4つのソフトを推奨しているわけではありません。使用は自己責任でお願いします。

 

帳簿の種類

会計ソフトを使えば一発解決なのですが、それでもある程度の基本知識を身につけておいたほうが無難です。

そこで帳簿の種類をしっかり見ていきましょう。

 

個人事業主がつけなければならない帳簿の種類は、確定申告の方法によって異なります。

確定申告の方法 つける帳簿
白色申告者 収入金額と必要経費を記載した帳簿
青色申告者(10万円控除) 簡易帳簿(現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳)
青色申告者(65万円控除) 主要簿(仕訳帳、総勘定元帳)

補助簿(現金出納帳、預金出納帳、小口現金出納帳、売上帳、仕入帳など)

 

所得税を安くするためには帳簿をたくさんつけたほうがよい

白色申告者がつける帳簿は「収入金額と必要経費を記載した帳簿」の1つしかありません。

この帳簿は、お金が入ったら記帳し、お金が出ていったら記帳するだけです。

 

白色申告は帳簿づけはとても簡単なのですが、控除がありません。控除は所得税を下げる仕組みですので、白色申告者は「帳簿づけでは節税できない」ということになります。

 

青色申告には10万円控除と65万円控除の2種類あります。

10万円控除の青色申告者は計5つの帳簿をつければ済み、損益計算書と貸借対照表をつくる必要もありません。

 

65万円控除を受けるためには、上記の表のようにたくさんの帳簿をつけ、さらに損益計算書と貸借対照表をつくらなければなりません。

 

「控除の額」と「所得税の減額分」は違います

ここで注意が1点あります。

控除の額がそのまま所得税の額から引かれるわけではありません。

所得税の額から引かれる額は、「控除の額×税率」で計算した額です。

 

税率は所得の額によって異なります。

例えば税率が10%の人では、10万円の控除を受けると所得税は1万円しか安くなりませんが、65万円の控除を受けると所得税は65,000円も安くなるのです。

 

10万円青色申告に必要な帳簿を見る

白色申告に必要な「収入金額と必要経費を記載した帳簿」はとても簡単なので、説明を省きます。

 

まずは、10万円控除の青色申告に必要な帳簿を見ていきましょう。

ここが帳簿づけの基礎になるので、65万円控除を狙っている人も、まずはこの知識を身につけなければなりません。

 

現金出納帳

現金出納帳は、現金が出入りしたときにつける帳簿です。

現金で売上したときと、現金で仕入れたときも現金出納帳に記載するので、現金出納帳は売上帳と仕入帳も兼ねています。

 

例えば、以下のような現金出納帳があったとします。

これはそれぞれ、どのような意味があるのでしょうか。1行ずつ解説していきます。

 

2018年 摘要 入金 出金 現金残高
現金売上 その他 現金仕入 その他
1 1 前年より繰越 1,000,000
1 2 現金小売 A様 10,000 1,010,000
1 3 自分の預金引出

B銀行普通預金

20,000 1,030,000
1 4 売掛金入金 C様 30,000 1,060,000
1 5 事業主借 40,000 1,100,000
1 6 現金仕入 D様 40,000 1,060,000
1 7 買掛金支払い E様 50,000 1,050,000
1 8 事業主貸

生活費として妻へ

300,000 750,000
1 9 広告宣伝費 20,000 730,000

 

(前年より繰越 1,000,000円)

個人事業主は決算の期間が1月1日から12月31日と決められています。

よって、現金出納帳のスタートも1月1日となります。

 

決算とは、1年間の収入(入金)と経費(出金)を整理することをいいます。企業の決算期間も1年間ですが、企業は決算のスタート日と終了日を自由に設定できます。例えば企業なら、4月1日から翌年3月31日とすることもできます。

しかし個人事業主は法律で1月1日から12月31日と決まっています。

 

現金出納帳は決算ごとにつくります。

現金出納帳の最初の項目は「前年より繰越」になります。ここでは1,000,000円としておきます。「前年より繰越」は入金でも出金でもないので、ただ現金残高に「1,000,000」と記載するだけです。

 

個人事業主をスタートした年の現金出納帳では「前年より繰越」ではなく「元入金」と記載して、事業用資金として用意した現金を現金残高に記載します。

 

現金残高は、銀行に預け入れている現金ではありません。事務所の金庫とあなたの財布の中にある現金のことです。

 

(現金小売 A様 10,000円)

A様が10,000円で商品を買ってくれて、代金を現金で支払ってくれた場合、「入金」の「現金売上」の欄に「10,000」を記載します。

 

現金残高は「1,010,000」に増えます。以降、現金残高の解説は省略します。

 

(自分の預金引出 B銀行普通預金 20,000円)

自分の銀行口座から20,000円おろした場合も、現金出納帳に記載しておかなければなりません。「入金」の「その他」に「20,000」を記載します。

自分の銀行口座からおろしたお金を「入金」扱いにすることに違和感を持つかもしれませんが、これが現金出納帳のルールなのです。

ここでの「現金残高」は事業のためのお金なので、自分の銀行口座からおろしたお金でも「事業のためのお金が増えた」とみなされるのです。

 

(売掛金入金 C様 30,000円)

得意先のC様とは、現金取引ではなく掛売りをしています。掛売りとは、先に商品を渡して、後から代金を回収する方法です。

そのC様から、20,000円の支払いがあった場合、「売掛金入金 C様」と書き、入金その他に「20,000」と記載します。

 

(事業主借 40,000円)

個人事業主のあなたが、自身のプライベートなお金40,000円を事業に使うとき、「事業主借」と書き、入金その他に「40,000」と記載します。

 

事業主借は、「事業のお金を個人事業主から借りる」という意味です。「自分から自分へ」なのですが、このように記載しなければならないのです。

 

イメージとしては「個人事業主としての自分」が「プライベートとしての自分」からお金を借りる、といった感じです。「個人事業主としての自分のお金」が増えるので入金その他に金額を記載するのです。

 

(現金仕入 D様 40,000円)

商売に使う商品をD様から仕入れていて、仕入れると同時に現金40,000円を支払っている場合、「現金仕入 D様」と記載し、出金その他に「40,000」と記載します。

 

(買掛金支払い E様 50,000円)

E様という仕入先とは、現金取引ではなく掛買いをしていたとします。掛買いとは、先に商品を受け取り、後から代金を支払う方法です。

そのE様に、現金50,000円を支払った場合、「買掛金支払 E様」と書き、出金その他に「50,000」と記載します。

 

(事業主貸 生活費として妻へ 300,000円)

個人事業主が男性で、家計の生活費として毎月妻に300,000円渡している場合、「事業のお金300,000円をプライベートに使う」という処理になります。

これを「事業主貸」といいます。

これも「自分から自分へ」のお金の流れなのですが、「個人事業主としての自分のお金」が減るので、出金その他に「300,000」を記載します。

 

イメージとしては「個人事業主としての自分」が「プライベートとしての自分」にお金を貸す、といった感じです。

 

(広告宣伝費 20,000円)

広告宣伝費は経費になります。20,000円を現金で支払ったら、出金、現金仕入に「20,000」と記載します。

 

売掛帳

売掛帳は、掛売りの内容をつける帳簿です。得意先ごとに分けて記載します。

 

先ほど見た現金出納帳から売掛金だけを抜き出すと、こうなります。

2018年 摘要 入金 出金 現金残高
現金売上 その他 現金仕入 その他
1 4 売掛金入金 C様 30,000 1,060,000

 

これを売掛帳に転載するとこうなります。

C様に売っているので、C様専用の売掛帳に記載します。

C様 住所 〇県〇市〇町〇番 電話〇〇-〇〇
2018年 品名 数量 単価 売上金額 受入金額 差引残高
1 1 前年より繰越 100,000
1 4 現金入金

(2017年12月2日販売)

30,000 130,000

売掛帳では、現金出納帳の「入金」は「売上金額」または「受入金額」になっています。

「売上金額」は商品を販売したものの、まだ代金の支払いを受けていないときに記載します。

「受入金額」は、以前に販売した商品の代金を回収できたときに記載します。

1月4日の入金30,000円は、受入金額に「30,000」と記載します。

売掛帳には、現金出納帳の「出金」の要素はありません。

 

支払いがあった日は2018年1月4日ですが、この商品は前年2017年12月2日売ったものだとします。それで2017年の売掛帳には、次のように書かれていなければなりません

 

C様 住所 〇県〇市〇町〇番 電話〇〇-〇〇
2017年 品名 数量 単価 売上金額 受入金額 差引残高
12 4 販売

(支払い予定2018年1月4日)

1 1 30,000 (省略)

 

売掛帳では、販売した商品の代金回収を確認できるというわけです。

売掛帳には、得意先であるC様の名称、住所、電話番号を記載しておく必要があります。

 

ちなみに、C様専用の売掛帳のことを「C様の口座」と呼ぶことがあります。

 

買掛帳

買掛帳は、掛買いの内容をつける帳簿です。支払先ごとに分けて記載します。

 

先ほど見た現金出納帳から買掛金だけを抜き出すと、こうなります。

2018年 摘要 入金 出金 現金残高
現金売上 その他 現金仕入 その他
1 7 買掛金支払い E様 50,000 1,050,000

 

これを買掛帳に転載するとこうなります。E様から購入しているのでE様専用の買掛帳に記載します。

E様 住所 □県□市□町□番 電話□□-□□
2018年 品名 数量 単価 仕入金額 支払金額 差引残高
1 1 前年より繰越 100,000
1 7 現金支払い

(2017年12月7日購入)

50,000 50,000

買掛帳では、現金出納帳の「出金」は「仕入金額」または「支払金額」になっています。

「仕入金額」は商品を購入したものの、まだ代金を支払っていないときに記載します。

「支払金額」は、以前に購入した商品の代金を支払ったときに記載します。

1月7日の出金50,000円は、支払金額に「50,000」と記載します。

買掛帳には、現金出納帳の「入金」の要素はありません。

 

支払いをした日は2018年1月7日ですが、この商品は前年2017年12月7日買ったものとします。それで2017年の買掛帳には、次のように書かれていなければなりません

 

E様 住所 □県□市□町□番 電話□□-□□
2017年 品名 数量 単価 仕入金額 支払金額 差引残高
12 7 購入

(支払い予定2018年1月7日)

1 1 30,000 (省略)

 

買掛帳では、購入した商品の支払い状況を確認できるというわけです。

買掛帳には、支払先であるE様の名称、住所、電話番号を記載しておく必要があります。

 

経費帳

経費帳は、仕入れ以外の出費を記載する帳簿です。租税公課、水道光熱費、旅費交通費、広告宣伝費などの科目ごとに分けて記載します。

ちなみに仕入れは現金出納帳に記載します。

 

先ほどの現金出納帳から経費だけを抜き出すとこうなります。

2018年 摘要 入金 出金 現金残高
現金売上 その他 現金仕入 その他
1 9 広告宣伝費 20,000 730,000

 

これを経費帳に転記するとこうなります。

広告宣伝費なので、広告宣伝費専用の経費帳に記載します。

広告宣伝費
2018年 摘要 金額
現金 その他
1 9 広告宣伝費 20,000

 

これは広告宣伝費ですが、租税公課や水道光熱費なども、次のような経費帳をつくることになります。

租税公課費
2018年 摘要 金額
現金 その他

 

水道高熱費
2018年 摘要 金額
現金 その他

 

これら1つひとつを「口座」と呼びます。

「経費帳の租税公課費の口座」「経費帳の水道光熱費の口座」などと呼ぶわけです。

 

固定資産台帳

固定資産台帳は、減価償却などの内容をつける帳簿です。減価償却資産ごとに分けて記載します。

 

10万円以上のパソコンや自動車などを購入した場合、全額をその年の経費とするのではなく、減価償却してその分だけを経費として計上します。

そこで、減価償却の内容を記載する固定資産台帳をつけなければならないのです。

 

固定資産台帳は、次のような形になっています。

資産名 耐用年数
区分 償却率
取得年月日 償却方法
年月日 摘要 取得価額 減価償却額 帳簿価額

 

すべての項目について1つずつ見ていきましょう。

 

(資産名)

固定資産台帳は減価償却資産ごとに口座をつくります。

そのため、例えばパソコンを2台持っている人は、パソコン1の固定資産台帳とパソコン2の固定資産台帳を作らなければなりません。

 

パソコン1の固定資産台帳には、資産名の欄に「パソコン1」と記入します。

 

(耐用年数、区分)

耐用年数は国が「この製品は大体これくらいの年数使える」と定めたものです。

耐用年数は減価償却資産ごとに異なります。

パソコンは4年、軽自動車も4年、普通の自動車は6年となっています。

建物では、木造事務所は24年、鉄骨鉄筋コンクリート事務所は50年となっています。

 

区分は減価償却資産を分類したものです。パソコンの区分は「器具・備品」、自動車の区分は「車両・運搬具」、事務所の区分は「建物」となっています。

 

耐用年数と区分については、国税庁の以下のサイトで確認することができます。

https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34353.php

 

パソコンの耐用年数は4年なので、国は「パソコンは4年使える」と考えているわけです。そこでパソコンの購入費用の経費計上(償却)は、4年にわたって行うことになります。

 

例えばパソコンを20万円で買った場合、1年目は5万円を経費に計上します。

計算式は、20万円÷4年=5万円/年となります。

減価償却資産を1年ごとに経費計上することを「償却する」といいます。

 

(償却率、償却方法)

償却率とは、製品の価格に占める1年の償却額の割合のことです。

20万円のパソコンの1年の償却額(経費に計上する額)は5万円ですので、パソコンの償却率は25%となります。

計算式は5万円÷20万円=0.25=25%となります。

または「1÷4年(耐用年数)」でも償却率「0.25=25%」を出すことができます。

 

耐用年数が3年の場合、「1÷3」となるので償却率は33.3333…となってしまいます。そこで国は「耐用年数3年の償却率は33.4%」と定めています。

 

償却方法には、定額法と定率法がありますが、個人事業主の償却方法は定額法となっています。この欄には必ず「定額法」と記載してください。

 

定額法は、毎年決まった額を償却(経費計上)していく方法です。20万円のパソコンを毎年5万円ずつ、4年間変わらず償却していきます。

ちなみに最終年の4年目だけは、償却額(経費計上額)を1円減らすというルールがあるので、49,999円を償却します。

 

(取得年月日)

減価償却資産を取得した日付を書きます。

 

(年月日)

減価償却資産を取得した日や減価償却する日を書きます。

 

(摘要)

「パソコン購入」や「パソコンを減価償却」などと必要なことを書きます。

 

(取得価額)

減価償却資産を取得したときの価格を記入します。製品価格です。

 

(減価償却額)

減価償却した金額(経費に計上する金額)を書きます。計算式は次の通りです。

減価償却額=取得価額×償却率

 

(帳簿価額)

帳簿価額とは、取得価額から減価償却額を差し引いた金額を書きます。

例えば2018年1月1日に20万円のパソコンを買い、その年に5万円を減価償却する場合、固定資産台帳は以下のように記入します。

 

資産名 パソコン 耐用年数 4年
区分 器具・備品 償却率 25%
取得年月日 2018年1月1日 償却方法 定額法
年月日 摘要 取得価額 減価償却額 帳簿価額
2018 1 1 パソコン購入 200,000 200,000
2018 12 31 2018年の減価償却費 50,000 150,000

 

ここまでくるとなぜ「減価償却」と呼ぶのか分かるのではないでしょうか。

固定資産台帳は見れば、資産を「償却」していくと資産の「価」値が「減」っていく様子が一目で理解できます。

つまりこのパソコンは1年間使ったことで、価値が20万円から15万円(帳簿価格)にまで減ったということになります。

 

65万円青色申告に必要な帳簿を見る

これまで解説した内容は、10万円控除青色申告者がつけなければならい帳簿でした。

65万円控除を獲得するには、上記のすべての帳簿に加えて、まだいくつか帳簿をつけなければなりません。

 

ここではそのうち

  • 仕訳帳(主要簿)
  • 総勘定元帳(主要簿)
  • 預金出納帳(補助簿)

のつけ方を解説します。

 

繰り返しになりますが、これらの帳簿(主要簿、補助簿)も決算書(損益計算書、貸借対照表)も、会計ソフトを導入すれば簡単につくることができます。

 

ただ、「原理」を知っておかないと、会計ソフトの入力をミスしたときにどこを間違えたのか分からなくなるので、ぜひこの後も読み進めてみてください。

 

仕訳帳(主要簿)

「65万円控除の青色申告には複式簿記の知識が必要」と聞いたことがあると思います。

「複式簿記の知識」と言われると難しく感じますが、「仕訳帳をつけられるかどうか」と聞けばいかがでしょうか。

 

仕訳帳も帳簿の1つにすぎません。帳簿は1行1行ゆっくり記入していけば、誰でも完成します。

 

(「左、借方、資産、費用」「右、貸方、負債、資本、収益」と覚える)

仕訳帳は、すべての取引を「左、借方(かりかた)、資産、費用」「右、貸方(かしかた)、負債、資本、収益」に仕訳けることです。

暗号のようなものが並びましたが、まだこの段階では理解できなくても大丈夫です。

 

例えばあなたが洋服屋を経営していて、1月1日に10,000円のシャツが1枚売れたとします。

この取引はあなたにとって次の2つの意味があります。

10,000円の現金を手に入れた 10,000円を売り上げた

 

これを仕訳帳に記載するとこうなります。

日付 借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
1月1日 現金 10,000 売上 10,000 シャツ1枚

 

シャツを売るという取引では「現金が増える」と「売上が増える」という2つの現象が起きました。

そして「現金」という用語は「借方勘定科目の欄」に入っています。「売上」という用語は「貸方勘定科目」の欄に入っています。

 

ではその「勘定科目」は何かというと、以下の表になります。勘定科目は5つに分かれます。

 

<勘定科目表>

5分類 種類 要するに 「左、借方」or

「右、貸方」

資産 現金、預金、売掛金、未収金、商品 あなたの財産 左、借方
費用 仕入高、水道光熱費、交際費、旅費交通費 収益を得るためのお金
負債 買掛金、未払金、借入金 あなたの負債 右、貸方
資本(または純資産) 資本金 資産から負債を引いたもの
収益 売上 商売で得たお金

 

つまり、シャツを売って10,000円の「現金」を得て、10,000円の「売上」も得たので、上記の表の「現金」と「売上」を見ればいいのです。

  • 現金:左、借方
  • 売上:右、貸方

ということが分かります。

だから、以下のような記載になるわけです。

日付 借方

勘定科目

借方

金額

貸方

勘定科目

貸方

金額

摘要
1月1日 現金 10,000 売上 10,000 シャツ1枚

 

お気づきだと思いますが、仕訳帳では、1つの取引をすると、必ず借方と貸方の両方に同じ額が入ります。

片方に金額が入って他方に金額が入らないことはありませんし、両方の金額が異なることもありません。

 

(「減ると逆になる」と覚える)

次は、あなたが2月1日に札幌出張に行って、交通費と宿泊費で30,000円を使ったとします。

勘定科目表を見ると「現金」と「旅費交通費」が該当します。

「現金」と「旅費交通費」だけを抜き出した勘定科目表は以下の通りです。

 

<勘定科目表>

5分類 種類 要するに 「左、借方」or「右、貸方」
資産 現金 あなたの財産 左、借方
費用 旅費交通費 収益を得るためのお金

 

困りました。「現金」も「旅費交通費」も「左、借方」です。

これでは仕訳帳の「右、貸方」を記載することができません。

こういうときは、次のルールがあるのです。

・減った場合は逆に書く

 

出張では「費用:旅費交通費」は増えています。よって、「逆に書く必要はない」わけなので、「左、借方」に書いてOKです。

 

しかし「あなたの財産」である「現金」は、出張によって30,000円減りました。

よって「減った場合は逆に書く」なので、この場合の「現金」は「右、貸方」に書くのです。

仕訳帳はこう書きます。

日付 借方

勘定科目

借方

金額

貸方

勘定科目

貸方

金額

摘要
2月1日 旅費交通費 30,000 現金 30,000 札幌出張
↑旅費交通費としては30,000円増えているので、「減っていない」ので「逆」にする必要がなく、本来の「左、借方」に記載してある ↑現金は本来は「左、借方」だが現金が減っているので「逆」になって「右、貸方」に記載してある

 

(仕訳帳は日付ごとに書く)

仕訳帳は日付ごとに書いていきます。シャツを売ったのが1月1日で、出張が2月1日でしたので、ここまでの仕訳帳はこのように書くわけです。

日付 借方

勘定科目

借方

金額

貸方

勘定科目

貸方

金額

摘要
1月1日 現金 10,000 売上 10,000 シャツ1枚
2月1日 旅費交通費 30,000 現金 30,000 札幌出張

 

こうした記載を毎日やるのは「大変」ですが、「難しくはない」と思います。

難しくないということは、仕訳帳をつけることができる、ということです。

仕訳帳をつけることができたので、「複式簿記を理解した」ことになります。

つまりあなたは青色申告で65万円控除を狙うことができるというわけです。

 

総勘定元帳(主要簿)

仕訳帳をつけることができれば、総勘定元帳は簡単です。

総勘定元帳は元帳と呼ばれていますので、ここでもそう呼びます。

 

仕訳帳は「日付ごと」につけましたが、元帳は「勘定科目ごと」につけるだけです。

つまり元帳は、仕訳帳から書き写すだけでいいのです。

 

これが仕訳帳でした。

日付 借方

勘定科目

借方

金額

貸方

勘定科目

貸方

金額

摘要
1月1日 現金 10,000 売上 10,000 シャツ1枚
2月1日 旅費交通費 30,000 現金 30,000 札幌出張

ここには「勘定科目」が「現金」「売上」「旅費交通費」の3種類あります。

よってこれを元帳に書き写すには、3種類の元帳を用意しなければならいということになります。

 

(現金の元帳を記入してみる)

現金の元帳
日付 相手

勘定科目

摘要 借方 貸方 残高
前年繰越 50,000
1月1日 売上 シャツ1枚 10,000 60,000
2月1日 旅費交通費 札幌出張 30,000 30,000

前年繰越は50,000円としておきました。

 

ここは「現金」の元帳なので、現金に注目します。

1月1日のシャツ売上10,000円は、

  • 現金が増えていて
  • 現金は左、借方で
  • 「増えている」なので逆にしなくていいので

左、借方に10,000と記入します。

 

2月1日の出張30,000円は、

  • 現金が減っているので
  • 減った場合は逆になるので
  • 現金は本来は左、借方だけど

この場合の現金は右、貸方に30,000と記入します

 

ここで現金残高に注目してください。

この「現金の元帳」では、借方が増額したら残高が増額し、貸方が増額したら残高が減っています。

それは「現金が借方」だからです。

 

相手勘定科目は、現金が借方だった場合は貸方の勘定科目(売上)を書き、現金が貸方だった場合は借方の勘定科目(旅費交通費)を書きます。

 

(売上の元帳を記入してみる)

次に売り上げの元帳を記載してみましょう。

1月1日にシャツを1枚売り上げています。

売上の元帳
日付 相手

勘定科目

摘要 借方 貸方 残高
前年繰越 50,000
1月1日 現金 シャツ1枚 10,000 60.000

売上は貸方なので、貸方に10,000と記入します。

そして売上は貸方なので貸方の額が増えれば残高が増えます。

 

(旅費交通費の元帳を記入してみる)

次に旅費交通費の元帳を記入してみます。

2月1日に札幌に出張し、30,000円を使っています。

旅費交通費の元帳
日付 相手

勘定科目

摘要 借方 貸方 残高
前年繰越 50,000
2月1日 現金 札幌出張 30,000 80,000

旅費交通費は貸方なので、貸方に30,000と記入します。

そして旅費交通費は借方なので、借方の額が増えれば残高を増やします。

 

預金出納帳(補助簿)

帳簿づけはもう峠を越えています。

預金出納帳はとても簡単です。

銀行の通帳をそのまま書き写して、相手勘定科目と摘要を書き加えるだけです。

 

  • は通帳を書き写すだけ、★は書き加えるところです。
●日付 ★相手勘定科目 ★摘要 ●入金 ●出金 ●残高
1月1日 前年繰越 50,000
2月2日 売掛金 A社から売上代金振り込み 100,000 150,000
3月3日 通信費 携帯電話代の引き落とし 25,000 125,000
4月4日 借入金 個人事業主から借入 100,000 225,000

 

売掛金や通信費は説明が不要でしょう。

「借入金、個人事業主から借入」は、個人事業主ならではの記載です。自分の手持ちのお金を、事業用の銀行口座に預け入れた場合、このように記載します。

イメージとしては「プライベートとしての私」が「商売をしている私」にお金を貸しているイメージです。

この通帳は「商売をしている私」のものなので、「借入金、個人事業主から借入」となるのです。

 

まとめ~「できる」と思えばできる

帳簿づけは、誰でもできます。

「できない」と思うのは、事務処理量が多いからです。しかし量が多いだけで、1つひとつの記入は難しくありません。

そして会計ソフトを使えば、事務処理量もかなり減ります。

青色申告の65万円控除のためと思って、帳簿づけにトライしてみてください。

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