ビジネス・マインド関連

「プロトコルに仕事をする」とは?

ネットやITの世界で頻繁に使われている言葉の1つに「プロトコル」があります。

油断しているとつい「手順」や「決めごと」ぐらいの意味でわざわざプロトコルという言葉を使ってしまうのですが、こうした使い方は、誤用とまではいかなくても、重要な言葉を軽く扱いすぎています。

 

記事のタイトルを「プロトコルに仕事をする」としましたが、どのビジネス書にも、このような仕事の仕方は紹介されていません。

これは僕の造語です。

 

意識しなければなんてことのない言葉なのですが、一度「プロトコルって結局何なんだろう」と考え始めると、いつまでも考え込んでしまう不思議さがあります。

少し無理やりな解釈も含まれていますが、「ビジネスのプロトコル化」の考察にお付き合いください。

 

プロトコルの元の意味は3つある

プロトコルという言葉を調べると、大体次の3つの意味が現れます。

 

  1. 国と国との間の外交上の儀礼。条約の原案や議定書。

  2. 複数のコンピューター間で通信をするときの手順や規約や約束事のこと。「双方のコンピューターが理解できるプロトコルを使わないと通信は成立しない」といったように用いる。インターネット・プロトコル(IP)など。

  3. ビジネスモデルの構成要素の1つ。

 

1がプロトコルの最も根源的な意味です。

元は外交関連の用語だったわけです。

外交といえば、パンダを貸したり借りたりするのも外交ですが、核開発をやめさせる圧力も外交です。

外交は2つ以上の国の間に起こる出来事なので、外交には必ず外国人が登場するわけです。

このようなユニークな場所で使われるプロトコルという言葉には、やはり重くて深い意味があるのです。

ビジネスへの活用が期待できます。

 

2はコンピューターやインターネットの世界になります。

外交から突然ITの世界に飛びましたが、こうした飛躍もプロトコルという言葉の魅力のひとつです。

 

3の考え方は、ビジネスモデルを構築する現場に1と2の概念を持ち込んだときに生まれたものです。

ここが僕の目指す着地点となります。

 

それぞれ詳しく見ていきます。

「どうすれば自分のビジネスをプロトコル化できるか」といった観点で読み進めてみてください。

 

プロトコルの「外交上の儀礼」をビジネスに応用する

他国の元首が日本にやってきたとします。そのとき首相官邸や外務省、そして宮内庁などは、国家元首を国際儀礼にのっとって迎え入れます。

そうしないと、日本は国際社会で恥をかきます。

また仮にその国家元首をぞんざいに扱ったら、日本の政府関係者がその国に行ったときにぞんざいに扱われるでしょう。

それくらい、国際儀礼は重要なのです。

 

国家元首といかないまでも、例えば海外の外交官と日本国政府関係者が会うときも、「じゃあレストランで食事をしながら打ち合わせをしましょう」というわけにはいきません。

だからといって国家元首を歓迎するようにその外交官をもてなす必要はありません。

 

つまり国際儀礼は、最上級のおもてなしを規定しているだけでなく、相手側の地位を考慮したランク付けがあるのです。

それほど地位が高くない外国からの客人に対し、高級すぎる対応をしてしまうことも、国際儀礼に反した対応になる、というわけです。

 

こうしたシチュエーションを、プロトコルという言葉を使って説明するとこうなります。

  • 「宮中晩餐会をプロトコルにのっとって行った」
  • 「この国際会議はプロトコルから逸脱している」
  • 「この公的行事はプロトコルに照らし合わせると大げさすぎる」

といったようになります。

 

プロトコルはマナーではない。プロトコルはやはりプロトコル

「外交上のプロトコル」や「晩餐会プロトコル」を、「外交上のマナー」「晩餐会マナー」と言い換えることはできないのでしょうか。

意味はなんとなく通じます。

 

マナーの一種に、テーブルマナーがあります。これは高級レストランで食事をするときの食器の使い方や立ち居振る舞い方を定めたものです。

 

テーブルマナーは守らなければならないものですが、しかしテーブルマナーを破ったときのペナルティはそれほど大きいわけではありません。

せいぜいそのレストランに二度と行けなくなるくらいです。

 

ところが外交上のプロトコルに違反が生じると、甚大な影響が生じます。

厳しい国なら4、5人の官僚の首は簡単に吹っ飛んでしまうのではないでしょうか。担当大臣が更迭されるかもしれません。

なぜなら、プロトコル違反は国の恥になりかねないからです。

 

イギリスとフランスが話し合って決めた

プロトコルが生まれたのは、16~17世紀のヨーロッパだそうです。

そのころのヨーロッパには王族がたくさん存在し、国境線はいつも変わっていました。

ヨーロッパの国々はほとんどが地続きですし、イギリスは島ですが海峡はとても狭いので、貿易が盛んに行われました。

 

そうなると、自分たちの国や王族のマナーが他国で通用しないという事態が多数発生するようになりました。また、異国の文化を受け入れられないケースも生まれます。最も深刻だったのは、その国の宗教や宗派が、他国に受け入れられないときです。

 

ヨーロッパ各地では、輸入や輸出を行うたびにトラブルが起きていました。

このビジネス上のロスを減らそうと立ち上がったのが、イギリスとフランスの王族でした。彼らは集まってプロトコルをつくったのです。

 

プロトコルをつくっておけば、例えば2つの王族が戦争中であっても、「ある地域で出会ったときは争わない」ということも可能になるわけです。

プロトコルは「絶対的なルール」となったわけです。

 

徹底的に守る。守れない者は退場させる

僕たちビジネスマンが外交儀礼としてのプロトコルから学ぶべきことは、ライバルたちと闘うときでも、プロトコルは厳格に守らなければならない、ということでしょう。

そしてもう1つあります。

プロトコルに違反する者は徹底的に追放する、ということです。

 

プロトコル違反を駆逐することは、冷たいように感じるかもしれませんが、ビジネスでは欠かせない決めごとといえるでしょう。

 

そして、プロトコルより弱いマナーを設けておくことも、ビジネスの知恵といえるでしょう。

 

プロトコルばかりを定めていては、窮屈でたまりません。

そこでマナーを定め、マナーは守らなければならないものだが、もし破ったとしても市場から追放することまではしない、とするのです。

 

しかしよくよく考えてみると、僕は自分のビジネス行動の中で、無意識にプロトコルとマナーを使い分けていたような気がします。

しかし今回、あらためて強くプロトコルを意識してみて、これまでの方法が間違っていなかったことが分かりました。

 

プロトコルのITなところをビジネスに応用する

インターネットはIP(Internet Protocol)というプロトコルによって支えられています。

IPアドレスという識別番号がパソコンやスマホに割り当てられているからこそ、どのパソコンどのスマホを使っても、インターネットとつながることができます。

 

そのほかにもIPには、パケット通信や分散処理、End to End、ベストエフォートといった特徴を有しています。

 

僕とあなたがネットでつながっていられるワケ

僕とあなたは、いずれもIPというプロトコルを守っているからネットでつながることができているのです。

もし僕かあなただのどちらがIPを守らなければ、僕たちは分断されます。

 

しかし僕もあなたも、ほとんど「プロトコルを守っている」という意識はありません。

外交上のプロトコルはあれほど厳格だったのに、ネットのプロトコルはそれほど気にしないでいいのでしょうか。

 

もちろんそうではありません。

ネットのプロトコルも、外交上のプロトコルと同じくらい重要かつ厳格です。

 

パソコンを買ったとき、またはスマホを契約したときに、ほとんど強制的にプロトコルを守ることを誓わされているのです。

しかもネットのプロトコルはとてもドライなので、複数のプロトコルのうち1つでも受け入れることを拒否すると、ネットワークに参加させてもらえません。

この厳格さは、外交上のプロトコルと同じです。

 

ネットのプロトコルはとても難しい

また、例えばアマゾンで本を1冊買ったとします。その代金をクレジットカードで支払ったとします。

すると2~3日するとアマゾンから指定した本が届きます。

 

アマゾンで本を買っているほとんどの人は、本屋で本を買うような感覚でアマゾンを使っていると思いますが、システム的には本屋で買う行為とアマゾンで買う行為は、まったく別物です。

 

ネットで買い物をする電子商取引(eコマース)には、取引基本規約、情報伝達規約、業務運用規約、情報表現規約といったプロトコルが存在しているからです。

 

ネットの温かさについて

この極めてITチックなプロトコルも、僕たちが普段行っている一般的なビジネスに落とし込んでいきましょう。

 

現代のパソコン、スマホ、インターネット、ITに対して、かつてのような冷たい機械感を感じないのは僕だけでしょうか。僕はネットに対して温かい印象を持っています。

 

僕はつい数年前までネット音痴だったのですが、副業を始めるためにネットにアクセスしたところ、完全にはまってしまいました。

 

副業で始めた無在庫輸入ビジネスにはネットは欠かせないアイテムですし、ネットがあったからこそ、僕はいま起業できました。

 

だから僕にとってのネットは、ビジネスアイテム以上の存在です。

生きるための必要度からいえば、血液のような存在、といても言い過ぎではないような気がします。

 

プロトコルは血液のように無意識的で決定的な存在

そのネット社会は、プロトコルで動いているのです。ネット上のシステムも、ネット上の契約も、ネット上の経済活動も、プロトコルに支配されているのです。

 

そして、プロトコルの量が膨大であり、1つひとつのプロトコルが複雑であることから、プロトコルを無視しなければ、普通の人は普通のネットを使うことができないのです。

 

先ほど、本屋で本を買うケースを考えてみました。

本の著者も、出版社も、印刷会社も、本の卸会社も、本屋も、そして僕も、プロトコルを持ち合わせていません。

しかしアマゾンで本を買うときは、プロトコルが山ほどあるのに、それを無視しなければなりません。

だから本屋で本を買うことと、アマゾンで本を買うことは、まったく同じように見えます。プロトコルが見えないからです。

 

プロトコルがなければネットビジネスは1ミリも動かないのに、プロトコルはないものとして扱わなければならない――やはり血液と似ていませんか。

 

血液に含まれている成分とか、血液が全身を巡っているとか、そのようなことを意識せずに僕たちは生きています。

 

しかし、血液の成分が少なすぎたり多すぎたりすると、途端に健康が害され最終的には死んでしまうのです。

プロトコルはネットビジネスの血液なのです。

 

 

プロトコルをそのままビジネスに応用する

横浜ベイスターズのオーナー企業、DeNAが、任天堂と提携したのは2015年のことです。

DeNAはスマホゲームで急成長した会社ですので、スマホゲームで出遅れていた任天堂にとっては自社のビジネスを補完できる良きパートナーに出会ったといえるでしょう。

 

しかし、2017年12月26日現在、任天堂株式会社の時価総額は5兆9,047億円に達します。

一方、株式会社ディー・エヌ・エーの時価総額は3,460億円にすぎません。

企業規模でいえば17倍の開きがあるのです。

 

なぜDeNAは、巨人・任天堂と提携できたのでしょうか。

同社の守安功CEOは「いろいろな業種や規模の会社と組むためのプロトコルを持っているから」と話しています。

 

プロトコルを書き換える、という作業

DeNAは一度、任天堂から提携話を断られたそうです。

しかしDeNAは、自社のプロトコルを書き換えて、巨人・任天堂でも受け入れられるようにしたのです。

僕たちのビジネスはせいぜい億円レベルですので、DeNAや任天堂とは比べるべくもないのですが、しかしここから学ぶことはできます。

 

まとめ〜ブレてはダメ。柔軟性を失ってもダメ。

プロトコルの厳格性と、状況に応じてプロトコルを書き換えることの必要性は、僕たちのビジネスでも導入すべき考え方です。

「プロトコルに仕事をする」ことで、ぶれないのに柔軟性に富むビジネスマンになることができるのです。

 

 

《参考資料》

「ビジネスにも役立つ、プロトコールは国際人のたしなみ」(OTEKOMACHI、読売新聞)

 

「IP (Internet Protocl)とは」(日本ネットワークインフォメーションセンター)

「ビジネスプロトコル」(HITACH)

「DeNA社長が明かす勝ち残りのプロトコル『任天堂との提携話も最初は断られた』」(東洋経済)

 

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