日本の景気が完全に回復しました。日本経済の「ダメ印」あるデフレについても、多くのエコノミストは「そろそろデフレ脱却宣言をしてもよい」と言います。
日経平均株価は2018年1月23日に終値で2万4千円台に到達し、これは26年ぶりの快挙です。26年前といえば1992年で、このあたりから日本はバブル景気をつくりだしていきました。
とうことは、いまここであえて悲観的な見方をすると、現在は「バブルの前の前」ともいえるのです。「もう少し好景気を味わわせてほしい」という気持ちは分かりますが用心し始めましょう。
バブルは必ず破綻するからです。いまからバブル崩壊の心構えをしておきませんか。
アメリカはすでにバブル入り
日本経済はアメリカ経済の後追いをする
これは事実ですが、100%正解でもありません。正しくはこうです。
アメリカの良い状態が日本に届くには時間がかかるが、悪いときのアメリカの状態はすぐに日本の伝染する
アメリカは2018年2月現在、とてもよい状況にあります。アメリカ版の日経平均はダウ工業株30種平均というのですが、これが過去最高を更新し続けています。
よって、日本がいま景気が良いといっても、実はアメリカの好景気に比べるとまだまだなのです。まさに「アメリカの良い状態が日本に届くには時間がかかる」なのです。
アメリカはいま、空前のバブルなのです。もしくは、バブルの前なのです。
日経新聞が異変を分析
そのようなアメリカのダウ平均が、2月2日に異変を起こしました。なんと665ドルも株安に転じたのです。
ダウ平均の2月1日の終値が26,165ドルで、2月2日の終わり値は25,500ドルです。1日で2.5%も安くなってしまったのです。
日本経済新聞は早速2月3日に「三重苦が引き起こした相場急落」という見出しでダウの急落を分析しました。
急落原因その1「金利が上昇したから」
日経新聞は、アメリカの金利が上がったために、株価が急落したとみています。なぜアメリカの金利が上がると、アメリカの株価が急落するのでしょうか。
その前に、そもそもなぜ株価が急落するのかというと、それは、
- 株を買う人が少なくなり
- 持っている株を売ってしまう人が増えた
からです。「株を売って現金にしてしまおう」と考える人が増えるので、株価が安くなってしまうのです。
では次に、金利が上がるとどうして株を持っている人は「株を売ろう」と考えるのでしょう。それは、企業の業績が悪化するからです。
企業はお金を借りてビジネスをしているので、借りているお金の金利が上がると、利益が減ってしまうのです。利益が減る企業の株を持っている人は、「持っていたくない、売ってしまおう」「買いたくない」と考えます。
ではなぜ、アメリカの金利が上がったのでしょうか。
それは景気が良くなったことで雇用が伸び、賃金が上がっているからです。働く人が稼ぐようになると物がよく売れるので、物の値段が上がります。物価が上がるわけです。
物価が上がると、中央銀行は景気の過熱を心配して金利を上げます。金利を上げると人々が貯金をするようになるので、あまり物を買わなくなり、景気の過熱を冷ますことができるからです。
しかし今回は、金利を上げすぎてしまい景気の過熱を冷ましすぎたため、ダウ平均の急落を引き起こしてしまったのです。
急落原因その2「大企業の儲けが意外に少なかったから」
繰り返しますが、アメリカの景気は絶好調です。よって、企業の業績も向上しています。石油大手のエクソンモービルも、iPhoneのアップルも、好調な決算内容を発表しました。
ところが、株式の売買をやっている投資家たちは、「本来はもっと儲けることができていたはずだ」と考えたのです。つまりそういう人たちは「エクソンもアップルも、以前の勢いがなくなってきたな。株を売ってしまおう」と考えるようになったのです。
株を大量に持っている人たちが、そこそこ儲かっているけど儲け足りない企業に見切りをつけ、その企業の株を売ってしまったので全体の株価が急落したのです。
急落原因その3「株式市場にお金が入りすぎて警戒心が起きた」
この3つめの急落原因が、最も危ない臭いがします。
アメリカの株式市場に1月31日、過去最大の資金が入ってきました。「株式市場に資金が入る」とは、大金を持った人たちがたくさん株を買い始めたということです。
株をたくさん買う人が増えたということは、株価を押し上げる要因のはずです。これではダウ平均が下がるのは説明がつきません。
ポイントは日付です。過去最大の資金が入ったのが1月31日で、急落したのが2月2日です。間に2月1日という1日が挟まっています。
この1日の間に、「ちょっと最近、株式市場のお金が入りすぎていないか」「株式市場は過熱しすぎではないのか」「これから株価が下がるのではないか」という雰囲気が広がってしまったのです。それが株を売る行動を取らせてしまったのです。
ダウ急落が日本に起きたら、と考えてみる
ダウ平均が2月1日の26,165ドルから、2日には25,500ドルへと1日で2.5%も下がりました。
日経平均の2月2日の終値は23,274円でした。この2.5%は581円です。これはものすごい数字で、例えば2.5%減が毎日発生したらどうなるでしょうか。
2.5%減が7日連続で起きるだけで日経平均は2万円を割り込む
初日 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | 6日目 | 7日目 |
¥23,274 | ¥22,692 | ¥22,125 | ¥21,572 | ¥21,032 | ¥20,507 | ¥19,994 |
このシミュレーションは前日より毎日2.5%ずつ減った場合のシミュレーションです。
わずか7日(7営業日)で、日経平均は2万円を割り込むのです。
このようなことが起きたら、再び「失われた〇十年」が始まってしまいます。
日本経済はしばらくは大丈夫。だが必ず下落はやってくる
もちろん、そのようなことは、明日明後日起きるわけではありません。来月も再来月も大丈夫でしょう。
しかし、景気の後には必ず不景気が起きます。これまでの歴史の中で、そしてすべての国において、この「景気の後の不景気」という現象は100%の確率で発生しています。
よって、今回のアメリカのダウ平均の急落を引き起こした3つの要因を覚えておき、今後似たような現象が日本で起きたら、「そろそろやばいかも」と覚悟する必要があるというわけです。
まとめ~調子が良いときこそ悲観的になろう
好景気に浮かれることは簡単です。また、好景気に浮かれないことはとても難しいです。
そこで差別化を図るには、いま悲観的な考えを持つことです。「備えあれば嬉しいな」の気持ちでこの好景気に乗りつつも、万が一の準備を怠らず、儲けていきましょう。
資料
「三重苦が引き起こした相場急落」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26506220T00C18A2000000/?nf=1