個人事業主を始めた当初は、確定申告は自分でやったほうがいいでしょう。自分のビジネスのお金の流れを把握できるようになりますし、経理の仕組みや税金制度を肌感覚で理解できる絶好の機会だからです。
会社設立を目標にしている個人事業主は特に、経理と税金を知っておかないと大きな落とし穴に落とされてしまうかもしれません。
しかし、確定申告を3、4年やれば、作業はルーティン化します。制度を十分理解できたら、あなたが経理業務から学べることは少なくなっているはずです。
そのような状態になったら、あなたが貴重な時間を割いて経理作業をやる必要はありません。経理作業をする時間があったら、本業に精を出したほうがいいでしょう。
「税理士を雇う」ことを検討してみましょう。
税理士を選ぶときは、
- 「こういう税理士は避けよう」というポイントが3つ
- 「こういう税理士を選ぼう」というポイントが2つ
- 「税理士を頼むときの心構え」のポイントが3つ
あります。
1つずつ見ていきましょう。
この記事の目次
【こういう税理士は避けよう1】説教っぽい人
あなたがまだ20代30代の個人事業主ですと、税理士によっては説教調で接してくることがあります。
数回しか会っていないのに、あなたにビジネスマナーを指導したり、経営者としての心構えを説いたりするような税理士は避けたほうがいいでしょう。
なぜなら、その税理士こそビジネスマナーがなっていないからです。
確かに新人個人事業主とベテラン税理士では、踏んできた場数(ばかず)が違います。人脈もけた違いでしょう。
そしてもちろん、税理士は「先生」であり、地域の名士でもあります。
しかし個人事業主と税理士の関係は、仕事を与える者と仕事を受ける者の関係です。仕事をもらいお金をもらう立場の人(税理士)が、仕事を与えお金を渡す人(あなた)に尊大な態度を取ることは、ビジネスルールに反しています。
考えてもみてください。見下している相手に対し、きちんとしたサービスを提供するでしょうか。
打ち合わせをしているときに自分から先に足組み出したり、長時間腕組みをしっぱなしの税理士は、注意したほうがいいでしょう。
一方、尊敬に値するベテラン税理士は、顧客の事業規模がどんなに小さくても態度を変えません。
【こういう税理士は避けよう2】反応が遅く面倒くさがり屋
税理士に仕事を依頼したものの、相談や問い合わせの回答が遅かったり、催促しないと回答してくれなかったりした場合、チェンジを検討したほうがいいかもしれません。
このような税理士は、顧客が不安を抱えているのに、「大ごとになることはないだろう」と高をくくっているのです。
実際はその税理士の読み通り大ごとにはならず、顧客側の取り越し苦労だった、ということが多いのは事実です。
しかし普段の小さな相談の回答ですら遅い税理士は、いざというときにレスポンスはさらに遅れるでしょう。
税務署からの税務調査のときに頼りにならない税理士では困ります。
また大きな税理士事務所に依頼すると、契約のときは「大先生」が出てきたのに、いざ付き合いが始まると経験の浅い「小先生」や税理士資格を持たない単なる「事務職」しか差し出さないこともあります。
このような対応を取られたら、やはりチェンジしたほうがいいかもしれません。
【こういう税理士は避けよう3】経営に口を出しすぎる人
顧客のことに無関心な税理士も困りものですが、逆に顧客のビジネスに口を出しすぎる税理士も考えものです。
例えば「だいぶ売り上げが伸びてきていますね。節税のために、自動車とか事務所のソファを買って経費をたくさん使いましょう」といった類のアドバイスをする税理士は注意してください。
自動車のような高額商品を買えば、最終利益が減るだけです。しかも自動車もソファも減価償却ですから、その年の減税効果もそれほど大きくはなりません。
こんな話もあります。
税理士が顧客の個人事業主に「自動車を買って節税しましょう」と提案しました。しかも自動車の購入先のカーディーラーまで指定して「ここで買ったほうがいいですよ」と言ったのです。
なんてことはありません。そのカーディーラーはその税理士の顧客だったのです。
ある顧客を儲けさせるために、別の顧客の出費を促すような税理士は良い税理士とはいえません。
【こういう税理士を選ぼう1】節税を指南してくれる人
良い税理士は、個人事業主に本当に有効な節税を教えてくれます。
例えば、白色申告をしている個人事業主に「私たちが力を貸しますので、青色申告に切り替えましょう」と提案する税理士は良い税理士かもしれません。
確かに青色申告にすれば、税理士への依頼費用は高くなります。税理士はより多くのギャランティがほしくて青色申告をすすめている、と解釈することもできます。
しかし白色申告から青色申告に切り替えることは、税理士への支払いが多少大きくなったとしても、それを補って余りあるメリットがあります。
また、個人事業主から受け取るギャランティは、税理士にとってそれほど大きなものではありません。つまりギャラのことだけを考えて、個人事業主に「青色申告に切り替えましょう」と提案する税理士はいないでしょう。
また、経費にしにくい出費について、個人事業主がビジネスに必要な支出だから経費に計上してほしいと税理士に依頼したとします。
そのとき税理士が、「税務調査で突っ込まれると覆るかもしれませんが、確かに仕事に関係する出費なので、思い切って費用計上してみましょう」と親身に考えてくれたら、頼りになるでしょう。
なんでもかんでも「それは経費にならない。仕事に使ったかどうかはともかく、それを経費にした前例はない」と拒絶する税理士は頼りになりません。
【こういう税理士を選ぼう2】味方になってくれる人
税理士は顧客と税務署の間に位置します。
いくら顧客からお金をもらっているからとはいえ、税理士が顧客の脱税を手助けすることはありません。
ときに税務署の方針や法律を顧客に守らせることも税理士の役割といえます。
しかしだからといって、税金のグレーゾーンでの判断を、いつも税務署寄りに解釈する税理士とは付き合わないほうがいいでしょう。
なぜならそのような税理士は、税務調査で税務署側に立ったような言動をしかねないからです。
顧客からすれば「誰からお金をもらっているんだ」という気持ちになるでしょう。
味方になってくれる税理士を選んでください。
【心構え1】税理士には礼を尽くそう
あなたはギャランティを支払う側で、税理士はそれを受け取る側です。
しかし、あなたが尊敬できると感じた税理士に出会えたら、その税理士を一段上に置くように接しましょう。「先生」と呼ぶのは当然の礼儀です。
個人事業主の味方になってくれる税理士は、とても良い税理士です。
なぜなら、税理士にとって個人事業主からもらうギャランティは微々たるもので、多くの税理士たちの本心は、大企業と顧問契約を結びたいのです。
それでも個人事業主の面倒をみてくれる税理士は、成長を見守りたいという気持ちがあるからです。
そのような税理士は、「この事業主は大した人物だ。将来会社を設立するのは確実だろう。先行投資の意味で、この個人事業主を育成しよう」と考えているのです。
このような税理士は、あなたが礼を尽くした対応をすれば、真摯な仕事をしてくれるでしょう。
【心構え2】税理士を雇うタイミングは「売上1,000万円」
「自分が税理士を頼むなんてまだ早い」と感じている個人事業主もいるでしょう。
また「極力コストを低く抑えたい。税理士に支払うお金がもったいない」と考えている人もいるでしょう。
個人事業主が税理士を雇うタイミングとしては、売上額1,000万円がひとつの目安になります。
ここまで売り上げがあれば、税理士費用を払う余裕も出てくるでしょうし、また取引額も増えているので経理事務も増えているはずです。税理士を雇って、売上に直結しない事務作業を減らしましょう。
さらに、売上1,000万円が続けば、会社の設立も視野に入ってきます。会社を設立するときに「個人事業主時代からお世話になっている税理士さん」がいると心強いといえます。
【心構え3】税理士費用は月1万円が最低価格
税理士費用は、訪問がなく記帳代行をお願いするだけの場合、月額1万円程度が最低価格です。月1回訪問してもらうと、月3万円ぐらいになります。
ただ、月1~3万円を支払っても、確定申告や決算書の作成は別途料金が発生し、その費用は1回数万円から15万円程度になるでしょう。
まとめ~パートナーだからこそ「気」が大切
自分のビジネスパートナーになってくれる税理士を選びましょう。ビジネスに行き詰まったとき、最も力強いのは「味方」の存在だからです。
税理士選びでは「気が合うかどうか」「味方になってくれるかどうか」が最も大切かもしれません。