個人事業主の節税対策というと、どうしても必要経費に関心が向きがちですが、実は必要経費よりも控除のほうが、簡単かつ確実に税金額を低くすることができます。
「控除(こうじょ)」という言葉は完全な税金用語なので、苦手意識を持つ人は少なくないと思いますが、単純に「国が税金を安くしてくれる仕組み」と覚えておいてください。
ただ、個人事業主が黙っていては、控除を利用することはできません。例えば医療費控除は、あなた自身が税務署に「私はこれだけの医療費を使ったので、医療費控除を使います」と申告しなければ、税金は安くならないのです。
なので「控除を学ぶこと」はとても大切なことなのです。
この記事の目次
控除はこう使う
控除にはたくさんの種類があり、それぞれ「その控除を使うための条件」が定められています。
こんなシーンをイメージしてみてください。
国「この条件に当てはまるなら、あなたの税金は安くなりますよ」
あなた「いや、その条件に、私は当てはまりません」
国「ではこの条件はいかがでしょうか。これに当てはまれば、これだけ税金が安くなりますよ」
あなた「その条件になら、当てはまります」
国「ならば、この控除が使えます」
控除の種類がたくさんあるのは、国があなたに控除を使ってほしいと考えているからです。
あなたは「控除のメニュー表」から自分に適した控除を選択するだけです。
あなたは、控除の条件をよく読んで、自分が当てはまるかどうかを判断すればいいだけです。
当てはまる控除は確定申告書に記載する
控除を実際に使うのは、毎年2月中旬~3月中旬に行う確定申告のときです。
税務署に提出する確定申告書に、控除の記入欄があるので、自分が該当する控除を記載するだけです。
控除が所得税を下げる仕組み
控除はさまざまな税に存在するのですが、ここでは個人事業主にとって最も影響が大きい所得税について見ていきましょう。
控除は、どうやって所得税を下げていくのでしょうか。
所得税は下の2つの計算式を使って算出します。
- 所得=収入-必要経費-所得控除
- 所得税=所得×税率-課税控除額
この計算式の中の「所得控除」と「課税控除額」が控除です。
所得控除の額が大きくなると所得が減り、所得が減れば所得税が減る、という仕組みが分かると思います。
一方で、課税控除額はダイレクトに所得税を減らします。
控除が個人事業税を下げる仕組み
個人事業主は個人事業税も支払わなければならないのですが、ここでも控除で税金を下げてもらえます。
- 所得=収入-必要経費-事業主控除-繰越控除
- 個人事業税=所得×税率
この式の中の「事業主控除」と「繰越控除」が控除です。
こんな勘違いはしないでください
控除の勉強を始めたばかりの人は、
控除の額だけ税金が減る
と考えてしまいがちですが、それは間違いです。
一部の控除は、確かに控除の額だけ税金の額が減るのですが、大多数の控除は、控除の額の何割かしか税金の額は減りません。
ちなみに所得税の額は、所得控除の額の5~40%しか減りません。
例えば所得控除の額が103万円と出たら、実際に所得税が減る金額は51,500円~412,000円です。
つまり「あなたの所得控除の額は103万円です」と言われても、所得税の支払い金額が103万円減るわけではないのです。
ちなみに5~40%のことを税率といい、税率は所得が高い人ほど高くなります。
控除は4分類20種類ある
所得税には「所得控除」と「課税控除額」の2つの控除があり、個人事業税にも「事業主控除」と「繰越控除」の2つの控除があります。
控除は計4分類あるのですが、所得控除は15種類もあり、繰越控除は3種類あります。
結局、控除は20種類あるということです。
税の種類 | 分類 | 種類 |
所得税 | 所得控除 | 15種類 |
課税控除額 | 1種類 | |
個人事業税 | 事業主控除 | 1種類 |
繰越控除 | 3種類 |
「20種類も覚えないといけないのか」と驚かないでください。
控除は、条件に合わなければまったく無縁の存在となります。例えば1年間に1度も病院に行かなかったら、医療費控除については知らなくて大丈夫です。
これまで結婚したことがない個人事業主や配偶者がいない個人事業主は、寡婦・寡夫控除は関係ありません。
20種類あっても「自分に関係するのは5つぐらい」という方が多いのではないでしょうか。
その「5つぐらい」を探すために、最低でも1度は20種類すべてに目を通しておく必要があるのです。
それでは1つずつ見ていきましょう
所得税の所得控除【15種類】
所得税の所得控除は15種類もあります。
まずは下記の表から、自分が該当しないものを除外してください。
その上で「関係しそうなもの」の説明をじっくり読んでください。
所得税の計算式である
所得税=(収入-必要経費-所得控除)×税率-課税控除額
の中の「所得控除」をどんどん増やしていけば、それだけ所得税が減っていきます。
所得控除の種類 | 内容 |
基礎控除 | 個人事業主なら誰でも該当し38万円が控除される。 |
青色申告特別控除 | 青色申告をする個人事業主は65万円または10万円が控除される。 |
社会保険料控除 | 支払った社会保険料と同額分が控除される。社会保険とは、医療保険、年金保険、介護保険など。 |
医療費控除 | 計算式「医療費控除=支払った医療費-支給される保険金-10万円」で算出された金額が控除される。 |
生命保険料控除 | 生命保険や個人年金など、民間の保険会社の保険に加入している場合、支払った保険料の一部が控除される。最高12万円。 |
地震保険料控除 | 支払った地震保険料の一部が控除される。最高5万円。 |
寄付金控除 | 国や市区町村などの特定寄付金という制度で寄付した金額の一部が控除される。 |
障害者控除 | 所得税法上の障害者に該当する場合、障害の大きさによって27万円または40万円または75万円が控除される。 |
寡婦・寡夫控除 | 離婚や死別などで配偶者を失った寡婦または寡夫に対し、27万円または35万円が控除される。 |
勤労学生控除 | 個人事業主が学生の場合、27万円が控除される。 |
配偶者控除 | 個人事業主の配偶者の年間所得が38万円以下の場合、38万円が控除される。 |
配偶者特別控除 | 配偶者の年間所得が38万円超76万円未満で、個人事業主の年間所得が1,000万円以下の場合、3万~38万円が控除される。 |
扶養控除 | 扶養している親族がいる場合「38万~63万円×該当する親族数」が控除される。 |
雑損控除 | 災害や盗難に見舞われたときに一定額が控除される。 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済法上の共済に加入している場合、支払った掛金の全額が控除される。 |
基礎控除
基礎控除は、誰でも該当する控除です。個人事業主も全員該当します。
控除額は38万円です。
青色申告特別控除
確定申告の申告方式で青色申告を選択した人は、65万円または10万円が控除されます。
65万円の「大型控除」を獲得するには、確定申告の際に損益計算書と貸借対照表を添付しなければなりません。
損益計算書と貸借対照表を作成しない方は、10万円しか控除してもらえません。
白色申告者はこの項目での控除はありません。
社会保険料控除
個人事業主は国民年金、国民健康保険などの保険料を支払っていると思いますが、1年間に支払った保険料の総額と同じ額を控除してもらえます。
保険料の総額には、個人事業主の分だけでなく、生計を一緒にしている配偶者や親族の分も含まれます。
医療費控除
医療費をたくさん使った人は、医療費控除を受けることができます。
総所得金額が200万円以上の人と200万円未満の人で計算式が異なってきます。
総所得金額200万円以上の人
総所得金額が200万円以上の個人事業主は、次の計算式で医療費控除を算出します。
医療費控除額=1年間の医療費-保険金等で補填(ほてん)される金額-10万円
<1年間の医療費とは>
医療費は、病院、クリニック、調剤薬局の領収書の代金を計上します。ここでの医療費は、患者が負担した金額になります。例えば治療費100万円の手術を受けて、国民健康保険を使って個人事業主が3割負担をした場合、「医療費控除の医療費は30万円」となります。
また医療費には、通院のために使った公共交通機関の運賃を含めることができます。
<保険金等で補填される金額とは>
「保険金等で補填される金額」とは、例えばがん保険から保険金がおりたときなどは、医療費控除額から差し引かなければなりません。
<10万円とは>
さらに10万円を差し引いてプラスの金額になれば、その金額分を控除してもらえます。
つまり総所得額が200万円以上の方は、最低でも医療費を10万円以上使っていないと控除は受けられないということです。
総所得金額200万円未満の人
総所得金額が200万円未満の方は、次の計算式で医療費控除を算出します。
医療費控除額=1年間の医療費-保険金等で補填される金額-総所得金額の5%
医療費や保険金等の補填については、総所得額200万円以上の人と同じです。
違いは「10万円を引く」のではなく「総所得金額の5%を引く」点です。
これはよくできた仕組みで、例えば総所得金額が150万円の人は、最後に75,000円を差し引かれるわけです(150万円×5%=75,000円)。
つまり、「75,000円以上の医療費を使っていれば控除が使える=所得税が減る」ということです。
200万円以上の人は10万円以上医療費を使わないと控除してもらえないので、200万円未満の人はそれより優遇されているということです。
税金制度はこのように、所得が少ない人に配慮する仕組みが随所に盛り込まれています。
生命保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金保険といった、民間の保険会社などが発売している保険商品に加入していると、生命保険料控除を受けることができます。
国民年金や国民健康保険などの社会保険は対象外です。
控除額の計算式は以下の通りです。
1年間の保険料(支払った金額) | 控除額 |
2万円以下 | 全額 |
2万円超~4万円以下 | 1年間の保険料(支払った金額)×50%+1万円 |
4万円超~8万円以下 | 1年間の保険料(支払った金額)×25%+2万円 |
8万円超 | 4万円 |
生命保険、介護医療保険、個人年金保険のそれぞれ上記の計算をし、それぞれ控除を受けることができます。
例えば、生命保険料を年8万円以上、介護医療保険料を年8万円以上、個人年金保険を年8万円以上支払っている人は、生命保険料控除は12万円になります。
また、生命保険だけに加入していて、1年間の保険料(支払った金額)が3万円だった個人事業主は、25,000円控除してもらえるということです。
・3万円×50%+1万円=25,000円
旧制度の計算方法
先ほど示した控除額の計算式は「新制度」でのものです。
生命保険料控除の制度が変更になり、2011年12月31日以前に結んだ契約を「旧制度」、2012年1月1日以後に結んだ契約を「新制度」としています。
旧制度での生命保険料控除の計算式は以下の通りです。
1年間の保険料(支払った金額) | 控除額 |
25,000円以下 | 全額 |
25,000円超~5万円以下 | 1年間の保険料(支払った金額)×50%+12,500円 |
5万円超~10万円以下 | 1年間の保険料(支払った金額)×25%+25,000円 |
10万円超 | 5万円 |
旧制度では生命保険と個人年金保険しかなく(当時は、介護医療保険はありませんでした)、上限はそれぞれ5万円でした。
新旧を織り交ぜても控除の上限は12万円まで
以上の内容をまとめると以下のようになります。
新or旧 | 生命保険 | 介護医療保険 | 個人年金保険 |
新 | 上限4万円 | 上限4万円 | 上限4万円 |
旧 | 上限5万円 | なし | 上限5万円 |
ただ、旧・生命保険5万円、新・介護医療保険4万円、旧・個人年金保険5万円に該当したとしても、上限の12万円までしか控除してもらえません。
地震保険料控除
個人事業主が所有し、実際に住んでいる住宅や家具などに地震保険をかけている場合、地震保険料控除を受けることができます。
控除金額は1年間の保険料(支払った金額)が5万円以下と5万円超で異なります。
- 5万円以下:同額が控除額になります
- 5万円超:5万円が控除額になります
寄付金控除
寄付金控除はどんな寄付でも対象になるのではなく、国や市区町村などの特定寄付金という制度で寄付した金額のみ、対象になります。
寄付金控除額は、次の計算式で算出します。
寄付金控除額=寄付金の額-2千円
つまり10万円寄付したら、98,000円を控除してもらえるというわけです。
ふるさと納税も特定寄付金になる
話題のふるさと納税は、「税」と付いていますが、所得税の控除では特定寄付金として扱われます。よって、ふるさと納税をすると、寄付金控除の額が増えるというわけです。
またふるさと納税による控除は、住民税でも行われるのでダブルで控除が受けられることになります。
障害者控除
個人事業主や配偶者、扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合、障害の大きさによって27万円または40万円または75万円が控除されます。
寡婦・寡夫控除
離婚や死別などで配偶者を失った場合、その後の状況によって27万円または35万円が控除されます。
個人事業主が女性の場合は寡婦、男性の場合は寡夫といい、寡婦・寡夫控除を受けられる条件が異なります。
また控除を使うには、寡婦も寡夫も配偶者を失った後、結婚していない状態でなければなりません。
<寡婦控除>
寡婦控除を受ける条件は次の2点です。この場合、27万円の控除を受けることができます。
- 夫と離婚、または死別、または夫の生死が不明で、所得38万円の扶養親族がいる
- 夫と死別、または夫の生死が不明で、世帯の合計所得が500万円以下
また、次の3つの要件にすべて合致すると、控除額は35万円になります。
- 夫と離婚、死別、夫の生死不明
- 扶養家族が子どもである
- 合計所得が500万円以下
よって、次のような状態は寡婦控除を受けることはできません。
- 夫と離婚、死別、夫生死不明だが、扶養親族がいない
- 夫と死別していても、所得が500万円以上ある
<寡夫控除>
寡夫控除の条件は次の通りです。
- 妻と離婚、死別、妻の生死不明
- 所得38万円以下の生計を一緒にしている子どもがいる
- 合計所得が500万円以下
寡夫控除には27万円控除しかありません。35万円控除はありません。
勤労学生控除
勤労学生控除が該当する条件は次の通りです。
- 特定の学校の生徒・学生である
- 給与所得などの勤労の所得がある
- 勤労の所得と勤労以外の所得の合計が65万円以下で、勤労以外の所得が10万円以下である
特定の学校とは、小学校、中学校、高校、大学、専門学校、専修学校などです。
勤労以外の所得とは、例えば親の仕送りなどです。
これらの条件に当てはまると、27万円の控除を受けることができます。
配偶者控除
個人事業主が配偶者控除38万円を受けるには、配偶者が次の要件をクリアしていなければなりません。
- 個人事業主と生計を一緒にしている
- 個人事業主の事業専従者ではない
- 年間の合計所得金額が38万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が103万円以下)
「事業専従者ではない」とは、その配偶者が個人事業主の仕事を手伝っていない、という意味です。
配偶者はほかの企業などで働いていてもいいのですが、所得が38万円(給与収入が103万円)を超えると、個人事業主は配偶者控除を受けることはできません。
ただ、配偶者の所得が38万円を超えてしまった場合でも「配偶者特別控除」を受けることができるかもしれません。
配偶者特別控除
個人事業主の年間所得が1,000万円以下で、個人事業主の配偶者の年間所得が38万円超76万円未満の場合、3万~38万円の控除を受けることができます。
配偶者の所得(給与収入)と、個人事業主が受けることができる配偶者特別控除の額の関係は以下の通りです。
配偶者の所得金額 | 配偶者の給与収入金額 | 配偶者特別控除 |
38万円超 40万円未満 | 103万円超 105万円未満 | 38万円 |
40万円以上 45万円未満 | 105万円超 110万円未満 | 36万円 |
45万円以上 50万円未満 | 110万円超 115万円未満 | 31万円 |
50万円以上 55万円未満 | 115万円超 120万円未満 | 26万円 |
55万円以上 60万円未満 | 120万円超 125万円未満 | 21万円 |
60万円以上 65万円未満 | 125万円超 130万円未満 | 16万円 |
65万円以上 70万円未満 | 130万円超 135万円未満 | 11万円 |
70万円以上 75万円未満 | 135万円超 140万円未満 | 6万円 |
75万円以上 76万円未満 | 140万円超 141万円未満 | 3万円 |
76万円以上 | 141万円以上 | 0円 |
つまり、個人事業主の妻または夫の年収(給与収入)が141万円未満であれば、金額は少なくなってしまいますが、配偶者特別控除を受けられるということです。
扶養控除
個人事業主が配偶者以外に扶養している家族がいる場合、38万~63万円の扶養控除が適用になるかもしれません。
配偶者は、配偶者控除か配偶者特別控除の制度があるので、扶養控除の対象家族から除外されています。
扶養家族の条件は次の通りです。
- 親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)、里子、市町村長から養護を委託された高齢者
- 個人事業主と生計が一緒
- 年間所得が38万円以下
- 個人事業主の事業専従者ではない
扶養控除の金額は、扶養家族の年齢によって異なります。
区分 | 控除額 | |
一般の扶養親族
(その年の12月31日の年齢が16歳以上) |
38万円 | |
特定扶養親族
(19歳以上23歳未満) |
63万円 | |
老人扶養親族
(70歳以上) |
同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
19歳以上23歳未満の親族がいる場合、最も高い63万円が控除されます。これは進学をしてお金がかかることを配慮しているためです。
また、控除額は該当者ごとに加算されます。例えば、一般の扶養親族と特定扶養親族が1名ずつ計2名いた場合、38万円×1名+63万円×1名=101万円を控除してもらえます。
雑損控除
雑損控除は、災害や盗難、横領に見舞われて損害を得たときに受けられる控除です。
雑損控除が認められる災害などは以下の通りです。
- 震災、水害など自然現象による災害
- 火災、爆発など人による災害
- 害虫など生物による災害
- 盗難
- 横領
詐欺や恐喝は、雑損控除の対象外になっています。
雑損控除の額の計算式は2つあり、両方を算出して金額の多いほうが雑損控除の額となります。
- 雑損控除=損害金額+災害関連の支出-保険金などで補填(ほてん)された金額-総所得金額×10%
- 雑損控除=災害関連の支出-5万円
「損害金額」は、通常の生活に必要な住宅や家具などの損害の金額となります。損害を受けた物の価格が30万円以上の場合、対象外となります。
「災害関連の支出」とは、例えば台風で壊された家を撤去したときの費用などです。
損害を受けた物を保険にかけていた場合、保険会社から支払われた「保険金」などは差し引きます。
さらに「所得の10%」を引いて出した金額が、雑損控除に該当します。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、次の3つの支払いをした場合、支払った金額と同額が控除されます。
- 小規模企業共済の掛金
- 個人型確定拠出年金の掛金
- 心身障害者扶養共済制度の掛金
小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構が行っている「個人事業主向けの退職金」のような制度です。毎月掛け金を支払うことで、引退するときに退職金のように共済金を受け取ることができます。
個人型確定拠出年金とは、確定拠出年金法に規定する年金で、私的年金です。公的年金である国民年金とはまったく別物です。
所得税の課税控除額【1種類】
以上で所得税の「所得控除」の説明は終了しました。
次は所得税の「課税控除額」という控除です。こちらは1種類しかありません。
課税控除額は97,500~4,796,000円となっていますが、所得が195万円以下の人は控除額が0円となってしまいます。
課税控除額は、所得税の額を計算する計算式に、
所得税=所得×税率-課税控除額
という形で出てきます。
この課税控除額は、控除の額がそのまま税金が減る金額になります。
所得が計算できたら、その所得に税率をかけて、最後に課税控除額という控除を差し引いたら、所得税の額が出ます。
所得と税率と課税控除額の関係は以下の通りです。
<所得・税率・課税控除額の表>
所得 | 税率 | 課税控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
この表から分かることは、次のことです。
- 税率は所得が多い人ほど高くなる。つまり所得が多くなると急に所得税が増えていく。
- 急に所得税が増えすぎないように課税控除額で所得税の額を少し減らしている。
個人事業税の事業主控除【1種類】
上記で解説した所得税は国税です。
一方、これから解説する個人事業税は地方税で、都道府県が徴収します。
個人事業税には「事業主控除」と「繰越控除」の2つの控除があり、それは個人事業税の計算式の中に含まれています。
個人事業税=(収入-必要経費-事業主控除-繰越控除)×税率
事業主控除は1種類しかなく、金額は290万円です。
1年間営業している個人事業主であれば、290万円の控除を受けることができます。
年の途中で個人事業主になった人は、月割となります。
よって、収入が290万円以下の場合、必要経費や繰越控除を考慮することなく、個人事業税は0円になります。
個人事業税の繰越控除【3種類】
繰越控除には次の3種類があります。
- 損失の繰越控除(青色申告者のみ対象)
- 被災事業用資産の損失の繰越控除(白色申告者のみ対象)
- 譲渡損失の控除と繰越控除
青色申告者は事業で赤字が出たとき、その損失を翌年に繰り越すことができます。「赤字を繰り越す」とはその赤字分が控除額になるということです。
白色申告者は、自然災害などに被災して損失が出たときに繰越控除を受けることができます。
また例えば機械を譲渡したことで損失が出た場合も、繰越控除として控除してもらえます。
まとめ~控除を扱えるようになったもう所得税は怖くない
ここまで読み込むことは大変だったと思います。お疲れさまでした。
「読むことは読んだけど、暗記できていない」という方もいると思いますが、安心してください。
控除に関する知識は「そういえばこんなときに使える控除があったな」と知っているだけで全然OKです。
「そういえば控除があったな」と認識しておけば、税務署に電話をかければ一発で解決します。税務署は「税について知りたい人」にとても親切です。
この記事さえ読んでおけば、税務署の職員の解説を聞いて「全然意味が分からない」ということは生じないでしょう。