「いまいちPDCAの重要性が理解できない」という人も、「いまさらPDCAかよ」という人も、本能的にPDCAを実行できていない人はぜひこの記事を最後まで読んでください。
「本能的にPDCAを実行する」とは、無意識に「Pの次はD、Dが終わったからCに行く」といったように動くことです。
「えーと、いま自分はCをしているんだっけ? いやいやAをすべき段階か」と考えてしまう人は、ぜひ「やることメモ」を活用してください。
- PDCAを無意識に行える本能化は重要
- PDCAの本能化にはやることメモが欠かせない
きょうのテーマはこの2つです。
PDCAの正体とは「自分との会話」である
「PDCAのことは十分知っている」という方は、この章を読む必要はありません。
次の章「あなたはPDCAができないから叱られる」に進んでください。
それではまずは、PDCAの基礎から見ていきましょう。
PDCAを本能化できていない人は、PDCAを「PはPlanだから、計画なんだな。DはDoだから実行なんだな。CはCheckだから検証なんだな。AはActionだから改善なんだな」と理解している、という特徴があります。
「それがなぜいけないの?」と思うかもしれませんが、このような理解の仕方は教科書を覚えているだけなので、実際のビジネスシーンでは使い物にならないのです。
ではPDCAはビジネスで不要かというと、そんなことはありません。
よほどの天才でもない限りPDCAで動かないとビジネスで失敗します。
重要なのは、ビジネスで「使えるPDCA」を身に着けられるかどうかなのです。
そこでこれからは、
- Pは「やれ」
- Dは「やる」
- Cは「やった?」
- Aは「やれる」
と覚えておいてください。
Pとは「やれ」ということ
PDCAは、自分との会話です。
ビジネスマンは誰でも、いつも自分との会話をしているはずです。
例えば「プレゼン資料が一応仕上がったけど、内容が全然薄い。このままでは上司に突っ込まれる。どうしよう」ですとか「今日中にデータを入力しないと、納期に間に合わない」といった自問自答は、常日頃から繰り返していると思います。
しかしこのような自問自答を、危機的状況に陥ったとしきか行わない人がいます。
それでは足りません。日常的にPDCAについて自問自答しましょう。
PDCAのPを「計画」という言葉に翻訳してしまうことは、自分を甘やかすことにつながります。「計画」と聞くと、「そのうちのいくつかは実行できなくても仕方がないよな」と感じてしまうからです。
当然ですがそれでは「きちんとPを実行している」ことになりません。
そこでPを「やれ」と翻訳するようにしてください。
自分で立てた仕事の計画や、上司から言われた仕事が目の前に現れたら、「おい私、これをやれ」と自分に言い聞かせていただきたいのです。
さらに「おい私、これをやらなきゃ未来はないぞ」と強めに言ってください。そうしないと次のDに進むことはできません。
PDCAはP→D→C→A→P→D→C→A→…という順番で繰り返していかなければなりません。
もしPがあやふやになってしまうと、流れがP→D→P→P…となってしまい、一向に前進しなくなってしまいます。
Dとは「やる」ということ
「やれ」と言われたらやらなければなりません。
そこでDは「『やる』という宣言である」と理解してください。
ここで気を付けていただきたいことは、「やるやる詐欺」です。
立派なPをつくり、しかも「やる」宣言しているのに、なぜか一向にやらない人のことを、そう呼びます。
あなたが一度でも周囲から「あいつは、やるやる詐欺師だな」と思われてしまったら、ビジネスマンとして非常に大きな損失を被ることになります。
やるやる詐欺師と呼ばれるくらいなら、慎重すぎる人と言われるほうがまだましです。
なぜなら、慎重な人は、最初の一歩を踏み出す感覚さえ覚えてしまえば、後は自然と「やる」ができるようになるからです。
しかし、やるやる詐欺師は、とりあえず「やる」と宣言しておけば嵐が過ぎ去ることを覚えてしまっているので、質が悪いといえます。
もちろん、過ぎ去ったと思った嵐は、破壊力を何倍にもアップさせて必ず再上陸してきます。
「やる」と宣言したのにやらなかったツケは、必ず回ってきます。
Cとは「やった?」ということ
Cのことを「検証」と翻訳してしまうと、難しく考えすぎてしまいます。
Cは単純に「やった?」と理解しましょう。
「やれ」も「やる」も、自己満足で終わってしまっては、お金になりません。
ビジネスは「やった」結果、日本円に換金できなければ成立しません。
そこで「やる」を終えた後に、必ず「自分は本当にやったのか? 期待されたすべてのことをやり終えたのか?」と自問してください。
「自分がやった仕事で、これだけのお金をもらっていいのか?」と考えることが、「やった?」の意味です。
Aとは「やれる」ということ
PDCAの最後に位置するAは、改善です。
実はカイゼンはトヨタの発明品です。
もちろんトヨタ以外の会社も、問題が起きたら問題の原因を探り、その原因を解消することを行っていました。
しかしトヨタだけが、全従業員が本能的にカイゼンに取り組める環境をつくったのです。
カイゼンは、問題が起きてから解決に取り組むことではありません。
1日8時間の労働の中で、常にカイゼンについて思いを巡らすことがカイゼンなのです。
PDCAのAとは、「自分はまだまだやれる」と信じることです。
カイゼンは、カイゼンできると信じなければ取り組むことができません。
やったことでお金を得ることができ、ビジネスが成立したら、次にもっと儲かる道を模索しなければならないのです。
もしくは、もっと楽に同じ金額を稼ぐ方法や、もっと短時間で同じ金額を稼ぐ方法を考えなければならないのです。
Aの「やれる」という確信が、あなたのビジネスを前進させるのです。
あなたはAができないから叱られる
もしあなたがビジネスマンで、自分では一生懸命やっているつもりなのに、仕事を1つ完成させるたびに上司から叱られている場合、自分のAがきちんと機能しているかどうか疑ってみてください。
西原式PDCAは、
- P:やれ
- D:やる
- C:やった?
- A:やれる
でした。
あなたに必要なのは、Aです。
上司はあなたのAでは「足りない」と考えている
あなたは「自分はきちんとPDCAを回しているのに、上司は評価してくれないのか」という不満を持っているはずです。
なぜあなたは、このような不満を持っているのでしょうか。
それはあなたの中に「PDCAをきちんとやっている」という意識があるからでしょう。
もしあなたが、上司から叱られているのに、それでもなお「自分はきちんとPDCAを回しているのに」という点に固執していると、いずれ見放されてしまいます。
見放された先にあるものは、よりつまらない仕事とより低い賃金です。
あなたを叱る上司は、あなたが一応はPDCAを回せていることを知っています。
ただ上司は、あなたのPDCAでは足りないと考えているのです。
上司はこう考えているのです。
「確かにあいつは仕事をサボっているわけではない。でもあの程度の仕事であれば、新人でもすぐに到達できる」
あなたはすぐにA(「やれる」)を見直してください。
「自分はもっとできる」と信じて、カイゼンに取り組み、より高度なP(「やれ」)を策定してください。
あなたのいまのPは、上司には陳腐なのです。
上司は部下のPDCAに怒っている
もちろん上司はスタッフたちのAにだけ注目しているわけではありません。
Pが苦手な人もDが苦手な人もCが苦手な人もいます。
運よく良い上司に恵まれると、その上司はきちんと「あなたはPの立て方が甘い」「君はもっとDを磨き上げなさい」「お前はCをサボっている」と、PDCAの段階ごとに問題点を指摘してくれるはずです。
しかし出来の悪い上司ですと、「なんかよく分からないけど、君は全体的にダメ」という叱り方をします。
あなたは上司を選ぶことができないので、そのようなダメ上司にあたってしまったら、自分でPDCAを構築していくしかありません。
そしてそのダメ上司に「なんかよく分からないけど、君はなんとなく良いね」と言わせるようにしてください。
PDCAを本能的に回すには、やることメモの導入が欠かせません。
次に、やることメモについて見ていきましょう。
やることメモが全てを解決する
ほとんどのビジネスマンは、システム手帳を持っていると思います。
システム手帳でなくても、人気の「ほぼ日手帳」や「高橋の手帳」といった、1年間有効の手帳を持っているはずです。
しかしそのような高価な手帳を、PDCAに活かしていない人は意外に多くいます。
そもそも手帳をPDCAに活かそうという発想がない方も、残念ながら存在します。
手帳に記載するだけでは足りない
やることメモをつくっていますでしょうか。
手元の手帳に業務内容を書いているだけでは、やることメモになりません。
仕事の締め切りの日のメモ帳の日付欄に「〇〇業務を課長に報告すること」と書いただけでは、やることメモになりません。
また、仕事の一覧表をつくるだけでも、やることメモになりません。
やることメモは毎日更新しなければならないのです。
そして、その日は「やることメモに書いたこと以外のことはやってはいけない」のです。
書いたとおりに自分を動かす。やることメモの指示は絶対
PDCAは自分との会話です。
P(「やれ」)は、自分が自分に命令することです。
D(「やる」)は、周囲に対する宣言です。「やる」と言っておいてやらなければ、やるやる詐欺になります。
C(「やった?」)は、自分の仕事でお金をもらってもよいものかどうかを確認することです。
A(「やれる」)は、自分を信じ、自分の仕事をより高度にしていく取り組みです。
やることメモは、メモの形をした自分、と思ってください。
手帳に書いても、スマホのスケジュール機能を使ってもかまいません。
大切なのはどこに書くかではなく、書いた内容通りに自分を動かすことです。
そして、やることメモに書いた内容は絶対的な存在です。
想定外を減らしていくことを目指す
「やることメモに書いた内容は絶対的な存在」と解説すると、きっと「それでは臨機応変な仕事ができなくなる」と反論する方もいると思います。
しかしそれは間違っています。
なぜならやることメモは、次の2つの性質を持っているからです。
- 想定外の事態を極限までゼロに近づけることができる
- やることメモの内容がしっかりしているから、想定外の事態が起きても冷静に対応できる
考えてみてください。
朝、会社に出勤して、やることメモに書いたことを実行しようと思ったときに、想定外の事態が発生し、その日にやることの内容を実行できなかったとします。
しかしその想定外の事態は、本当に想定外に起きたことでしょうか。
やることメモを綿密につくりあげていれば、実はその事態も十分盛り込むことができたのではないでしょうか。
やることメモの精度をどんどん上げていくと、やることメモの通りにその日の仕事が進むはずです。
やることメモを、近未来の予想表にしていきましょう。
また、本当の想定外の事態が起きても、やることメモがしっかりしていれば、本来やるべき仕事を残業でこなすことも、次の日に回すこともできます。
やることメモがあやふやだと、想定外の事態に見舞われたときにパニックになってしまいますが、やることメモがしっかりしていると、想定外の事態を冷静に処理できます。
やることメモの精度を高めるために欠かせないのが、PACDへの取り組みなのです。
まとめ〜PDCAをいつも脳の真ん中においておく
もしあなたが30代のサラリーマンであれば、少なくとも10回はPDCAの重要性について聞かされていると思います。
「もうPDCAについて注意されるのはこりごり。十分、仕事をこなせているし」と思っているのではないでしょうか。
しかしそう思っている人ほど、PDCAはできていません。
なぜなら、PDCAは仕事をしている間、常に意識していなければならないことだからです。