世の中には根っからの経営者がいて、そのような人はカリスマ性や独特の嗅覚で突き進んでいきます。一種の天才ですね。
しかし僕はそのようなタイプの経営者ではありません。ついこの間までサラリーマンでしたし。
僕の経営スタイルは、地道にスキルを1つひとつ着実に身に着けていくことです。
僕の経営目標は、会社を長きにわたって存続させることです。
僕はいつも「大企業がどのように社員たちを動かしているのか」についての情報を集めています。
その中で最近、コンピテンシーという概念に出会いました。
それほど新しい考え方ではないのですが、僕は知りませんでした。
僕が知らないのも当然で、コンピテンシーはビジネスを成功させる良い方法論なのですが、大手企業ですら導入に失敗することが多いそうなのです。
日本では、コンピテンシーはあまり浸透していないのです。
でもこのコンピテンシーの考え方は、僕のビジネスに使えそうだと強く感じています。
とういことは、あなたの副業ビジネスにもきっと役に立ちます。
コンピテンシーとは、簡単に説明するとこういうこと
コンピテンシーの考え方はいたってシンプルです。
社内のローパフォーマーたちに、ハイパフォーマーの行動と思考を移植できれば、社員全員がハイパフォーマーになる
これだけです。
コンピテンシーは企業の人事制度に関わる考え方で、僕は関連資料をいくつか読んでみたのですが、結局言っていることはこういうことでした。
ちなみにハイパフォーマーとは、いわゆるできる社員のことで、ローパフォーマーとは、能力がそれほど高くない社員のことです。
僕は、コンピテンシーの考え方はサラリーマンが副業に取り組むうえでとても大切である、と感じました。
しかしどうして大企業が、これほどシンプルで効果がありそうな考え方の導入に失敗しているのでしょうか。
コンピテンシーは「行動」だけではダメ。「思考」にも注目する
コンピテンシーを人事制度に応用してうまくいかなかった企業の敗因は、コンピテンシーの意味を「ハイパフォーマーの行動特性をマニュアル化したもの」と単純に理解したことのようです。
コンピテンシー型人事制度を推奨している専門家も、ハイパフォーマーの「行動だけ」をローパフォーマーたちに落とし込もうとすると失敗する、と述べています。
なぜならビジネスパーソンの行動特性の種類は800個もあるからです。
ハイパフォーマーの800個の行動特性を、ローパフォーマーに落とし込むことはそもそもできませんし、だからといってローパフォーマーがハイパフォーマーの20~30個程度の行動特性を真似ても成果は期待できません。
ではなぜ日本企業の中に「コンピテンシーとは、ハイパフォーマーの行動特性をマニュアル化したもの」という誤った理解が広がってしまったのでしょうか。
それは、1990年代初頭までの日本企業では、コンピテンシーをそのように理解していてもそれでうまくいっていたからです。
ところが2008年のリーマンショック前後から、業務のIT化とビジネスのグローバル化が進んだことで、「日本風ガラパゴス的コンピテンシー」では通用しなくなったのです。
人事部スタッフのサボりが失敗の原因?
コンピテンシーが本来焦点を当てるべき対象は、従業員の「思考」です。
ハイパフォーマーたちは何を「考え」てその行動を採用したのか、ハイパフォーマーは常にどのような「動機」を持っているのか――こうした観察が企業の人事部には欠かせないのです。
もちろん人事部のスタッフたちは、ハイパフォーマーたちの「行動」を観察し続ける必要があります。
つまり本来のコンピテンシーとは、高い成果につながる「行動」と「思考」の両方の特性に注目することなのです。
しかし、他人の思考に注目することはとても難しいことです。行動を真似するだけでいいのなら簡単です。
そこで僕は、日本の大企業がコンピテンシー導入に失敗する理由を、このように推測してみました。
企業の人事部スタッフの中に「ハイパフォーマーたちの思考を注目するのは大変だな。とりあえずハイパフォーマーたちの行動だけを集めてみよう」という、怠慢があったのではないでしょうか。
優秀かどうかなんて関係ない
そしてコンピテンシーでもうひとつ大切なことは、人事部スタッフは、調査対象となる社員が「優秀かどうか」を見るのではない、ということです。
コンピテンシーでは、「成果を出せる人材かどうか」だけが重要なのです。
以上のことをまとめるとこうなります。
- ハイパフォーマーたちの「行動」に注目することは大事
- だがハイパフォーマーたちの「思考」を観察することはさらに大事
- 「優秀かどうか」は観察ポイントではなく、見る必要すらない
- 「成果を出せるかどうか」のみを注視する
僕はこの考え方が気に入りました。
サラリーマンの本業は、高い学歴や優秀さが大きく左右します。
しかし副業ビジネスでは、学歴も優秀さも一切関係ありません。
副業が成功したかどうかは、成果を出せたかどうか、儲けることができたかどうか、だけなのです。
コンピテンシーのレベルは5段階
コンピテンシーの考え方では、人の「レベル」に注目します。レベルは5段階あります。
レベル | 内容 | そのレベルの人はどのような行動を取るのか |
レベル5 | パラダイム転換行動 | まったく新たな、周囲にとっても意味のある状況をつくり出す行動 |
レベル4 | 創造行動 | 独自の効果的工夫を加えた行動、独創的行動、状況を変化させよう、打破しようという行動 |
レベル3 | 能動行動 | 明確な意図や判断に基づく行動、明確な理由をもとに選択した行動 |
レベル2 | 通常行動 | やるべきことをやるべきときにやった行動 |
レベル1 | 受動行動 | 部分的・断片的な行動 |
レベル5:パラダイム転換行動
レベル5のパラダイム転換行動とは、
- 誰も考えつかなかった方法を発案し
- その方法を実現させること
です。
レベル5になるには、この2つを実現しなければなりません。
ビジネスの世界ではいま、人工知能が(AI)が注目されています。
ある会社の社員AさんがAIを勉強し「AIを使えばうちの会社の事務作業の効率が3倍アップする。しかも事務員はいまの5分の1にまで減らせる」と発見できたとします。
Aさんがそれを上司に報告し、そのアイデアが役員会で了承され、AI導入のための予算がつきました。
Aさんは各職場を回ってAIの導入に向けて協力してほしいと依頼しました。
そしてAさんは半年後に見事、事務作業の効率を3倍アップさせて、事務員を5分の1に減らすことができたのです。
さらにAさんは、事務作業の効率化により事務作業から外された元事務員を営業力強化に活用し、売上を2倍にしました。
つまりAさんはAIの活用によって、従業員を1人も解雇することなく売上増を達成したのです。
Aさんは間違いなくレベル5の社員です。
レベル4:創造行動
レベル4の人は、レベル5よりは力量が劣るのですが、それでも社内ではとても優秀な人材と目されています。
Aさんの「AIを導入して事務作業を効率化させて事務員を5分の1にする」という提案は当初、職場の反感を買いました。
しかしレベル4社員のBさんは「AさんのAI戦略は必ず会社のためになる」と確信します。
それでBさんは自分でもAIを学び、社内で真っ先にAIを使った業務を始めたのです。
Bさんは単に、Aさんのご機嫌を取るためにそのような行動に出たわけではありません。
このタイミングでAIを導入しなければライバル企業に負けると分かったのです。
Bさんは自分でAI業務を実行するだけでなく、AI戦略に異議を唱える人とコミュニケーションを取り、AI戦略の必要性と自社の将来について説明しました。
Aさんが発案したAI戦略が成功した背景には、Bさんのこうした裏方としての作業があったのでした。
レベル3:能動行動
レベル3の人の行動はレベル4の人と似ています。レベル3の人もハイパフォーマーに数えられます。
レベル3のCさんは以前から、AさんもBさんも将来役員になる人物であると見ていました。その2人が動いているのだから「何かある」と察知しました。
それで社内でAI導入が決まるとすぐにCさんもAIの勉強を始めました。
ただCさんに足りないのは、周囲の人を巻き込む影響力です。上司からの評価は高いのですが、まだ管理職に抜擢されるほどではありません。
レベル2:通常行動
レベル2のDさんはローパフォーマーです。
社内でAI導入が本格化したころに、自分でも少しずつ勉強を始めます。
Dさんの上司はDさんを叱ることはありませんが、いつも物足らなく感じています。
レベル1:受動行動
レベル1のEさんは受動行動しか取ることができません。周囲のみんながAIについて熱く議論していても、自分の仕事が終わったら帰宅してしまいます。
しかし反抗的なところがあるわけではなく、上司から「Eさん、あなたもAIについて勉強しておかなきゃだめだよ。この本を貸してあげるから、自宅で読んできなさい」と言われると、きちんと読みます。
Eさんの上司はいつも、Eさんの消極的な態度にイライラしています。
まずはレベル4を目指そう
おそらく僕のコラムを読んでいる方々は、レベル3に達していると思います。
僕と一緒に、レベル4を目指しませんか。
そうなのです、僕もいまはレベル4「創造行動」を目指している段階なのです。
副業を成功させるには、レベル3で十分であると僕は思います。
でもビジネスに携わっている以上は、やはりパラダイム転換に関わりたいじゃないですか。
ただ、一気にレベル5に飛ぶことは不可能です。
そこでまずは、本物の成功者たちを学び、ノウハウを身に着け、そしてレベル4になりましょう。そこからゆっくり頂点を目指せばいいのです。